【体験】故郷とずっとつながっている〜郷友会の八月踊り

島唄

2017/10/10

ペン

麓 卑弥呼

私は今年、奄美にきて18年目。

もうじき、東京で過ごした時間よりも長くをこの島で過ごしたことになりますが、奄美大島の伝統文化である、八月踊りを踊ったことは実はあまりありません。

それは、奄美大島の中心部である名瀬に住んでいることが大きな理由の一つだと思います。

集落(シマ)ごとのコミュニティーで受け継がれる八月踊りは、都市化がすすむ名瀬中心部ではあまり行われていないからです。

だから、八月踊りはシマッチュの結びつきの強さの表れのようで、なんだか憧れの象徴でもあるのです。

ある日、シマに所属していなくても、八月踊りが名瀬中心部で体験できると聞き、早速訪れてみました。

商店街に鳴り響くチヂンの音

トン、トン、トン…

月夜の晩、訪れたのは奄美市名瀬の観光案内所兼交流スペースのAiAiひろば。

チヂン(手持ちの太鼓)の音が夜の商店街に静かに響き渡ります。

奄美AiAiひろば入口

明るい光のあふれる建物をのぞいてみると、そろいの浴衣に着替えたシマッチュたちが集まっていました。

奄美八月踊り体験

今回お邪魔したのは、奄美市住用町川内集落の郷友会。

とてもなごやかな雰囲気。みんなリラックスしておしゃべりしたり、なにやら準備をしている様子。

奄美市住用町川内郷友会のぼり

しばらくすると、さあさあ、というふうに、男性がチヂンを叩き始めました。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

するとバラバラだったオジ・オバたちが自然と大きな輪に。

男性の唄に応えるように、女性の唄声が響き八月踊りがスタートしました。

もうひとつのコミュニティー「郷友会」

輪になって踊る奄美の八月踊り

シマッチュ(島人)のシマを思う気持ちの強さは、奄美にきて驚いたことのひとつです。

いろいろなモノが足りなかった島暮らし。そんなときには人々が助け合い、力を補完しあって大きなパワーに変えてきました。

そんなシマッチュの結びつきを象徴する存在が、「郷友会」。

ふるさとを離れた同郷のシマッチュが結成する組織。なにかがあればすぐに駆けつけ、力になってくれます。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

名瀬にはたくさんの郷友会が存在します。山深く、かつては集落間の行き来も困難だった島では、隣り合う市町村であっても郷友会が組織されているのです。

今回の川内集落名瀬郷友会には、川内集落から応援も駆けつけてきています。

逆に、川内集落でイベントがあるときには郷友会のメンバーが駆けつけ、お互いになくてはならない存在なのです。

観光客も飛び入りで楽しめる!ゆるい寛容さがたまらない

何曲か踊ると休憩タイム。

輪の真ん中に置かれたヤクルトやビールが振る舞われます。

八月踊り体験休憩タイム

その間に郷友会幹事長の田丸友三郎さんにインタビュー。

長く公園で行っていた八月踊りですが、時代の変遷とともに近隣住民への配慮もあって、3年前からAiAiひろばで開催することになったとのこと。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

「郷友会も高齢化して人数が少なくなってきたし、かえって室内の方がいいかも」。

よく見ると、私のほかにも観光客とおぼしき人達がいます。

見よう見まねで手踊りをして、楽しんでいる様子。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

大阪から観光で訪れたという女性は、

「いいですね~。あたたかみを感じます。子供からお年寄りまでが集まって・・・団結力がないとできないことだと思いますよ」

月夜のもと公園で行われる光景は、奄美らしくて私はとても好きだったけれど、これはこれでいいのかもしれません。たとえ伝統であっても、時代の変遷とともに柔軟に形を変え、けれど芯はきちんと残しているものが本当に継続していくものだと思うから。

踊りに参加!ひたすらに踊るだけの楽しさを体感せよ

奄美八月踊り体験

基本的に踊りは同じ型の繰り返し。

私のように初心者でも咎められないし、笑われることもありません。

そして、型は決まっているのだけれど、実は比較的フリースタイル。

例えば手のあげる高さやタイミング、歩幅。よく見ていると、踊っている人それぞれのスタイル。その寛容性はかなり高いと思われます。

ということで、臆することなく、前の人をどんどん真似して、ひたすらに踊り続けます。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

スピードはどんどんと早くなって、ぱっと終了。

そのあとには不思議な清々しさが残ります。楽しいなあ。

高齢化が進んでいるといいますが、赤ちゃんづれも方もいました。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

子供がチヂンの叩き方を教わる場面も。

奄美市住用町川内郷友会八月踊りちぢん

シマごとの伝統文化を受け継ぐ場になっているんですね。

見ているだけじゃつまらない!踊ってわかることがある

踊りを踊って、いろんな人のお話を聞いて、充実した時間は2時間で終了。

最後はこれまた伝統の六調で場をなごませ、全員で片付けをして解散しました。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

八月踊りって伝統文化だけれど、寛容性があり、それは奄美の文化そのものだと思います。

けして拒絶せず、海の向こうから来るものを大らかにあたたかく受容してきたシマの人々。

奄美市住用町川内郷友会八月踊り

形を変えながらもしっかりとつながって続いていくこの伝統文化をぜひ、みなさんも体験してみてください。

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この記事を書いたフォトライター

麓 卑弥呼

麓 卑弥呼

ライター/しーまブログ編集長。東京都出身。大学時代に訪れた与論島にはじまり、縁あって奄美大島の新聞社に新卒で就職。さらに縁あって島人と結婚し、自らが島人となり奄美に完全に根を下ろす。フリーライターなどを経て2014年にしーまブログに入社し、現在に至る。

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