小宿相撲甚句
人から人へ継承される崇高な伝統の囃子歌・小宿相撲甚句
相撲甚句(すもうじんく)とは、相撲の世界に江戸時代から伝わる文化で、取り組みの前に披露される囃子(はやし)歌のことである。
相撲が盛んな奄美のなかでも小宿集落は相撲熱が高い。豊年祭では一日をかけて相撲を取っていくが、祭りのなかばで披露されるのが、小宿相撲甚句だ。
6代目 岡山純博あに
この相撲甚句は100年以上に渡り継承されており、代々一人の唄者がその大役を担う。現在の6代目唄者・岡山純博さんは「非常に責任ある仕事だと思っている。風邪など引いて声が出なかったら大変なことだから、体調管理は万全を期している」と語る。
30代半ばで後継者として指名を受け、はや30余年が過ぎた。現在は後継者を育てるため、青壮年団に声を掛けて育成中だ。
昭和38年の豊年祭
小宿相撲甚句は、地元出身の恵源治さんが1916(大正5)年に海軍の兵役を終えて帰郷した際に持ち帰ったものが、始まりとされている。
「揃(そろ)たーアーエー揃いました関取さんが揃た」と岡山さんが朗々と唄い始めると、鮮やかな化粧まわしをつけた力士たちが「ホイ」「ヨーサイサイヨーサイサイ」と掛け声を掛けながら息の合った動きで土俵入りする。
はじめの4小節は「アラシャゲ」。めでたいことを唄う「花歌」で構成されている。最大のポイントは出だしの音程とのこと。何十年と唄い続けている岡山さんでも、「完璧にできた」と実感できたときは数えるほどしかないそうだ。相撲甚句の唄にあわせ、剛健な関取が勇壮に踊るさまは、まさに豊年行事の花形でありシマの子どもたちの憧れでもあったという。
「相撲甚句を町内会全体で守り、継承していきたい」という集落の思いは強く、継承活動も熱心だ。今夏もこれから幾年先も、伝統の唄声はきっと集落に響き続けるだろう。
KOSHUKU-小宿集落-
地元呼称:コシュク 世帯数:319 人口:612
奄美市名瀬の下方地区にある。プロ野球や実業団陸上部のキャンプも行われる複合運動施設や小中学校もあり、下方地区の中心にある集落。埋立地の浜里・平松地区が隣接している。