鶏卵~八月踊り・唄~
鶏が卵から雛を育てる姿に人を重ね「教訓」を学んだ唄
- 右足を出すと同時に右手首を回し、左足を出すと同時に左手首を回す
- 終盤はテンポアップ!
その昔、この地域は温暖多湿な気候と大川の豊富な水の恵みを利用した田袋が広がっていた。地域活性化のために5年ほど前から地域で稲作にも取り組み、それと合わせて豊年祭(旧暦9月9日)で唄い踊られる鶏卵(にわとりたまご)〜八月踊り・唄〜は、この集落独特のものである。
「鶏ぬ卵、二十日夜にしりる。二十日おせ抜けば、羽ぬもて飛びゅり(卵は二十日経った夜にふ化する。二十日間(卵を)抱いたら羽も生えて飛ぶ)」―。
「鶏卵」は西田集落固有の八月踊り唄。卵を腹に抱いて温め、産まれた雛を大事に育てる親鶏の姿を人間である自分と重ねる「教訓歌」だ。込められた意味は「子は宝」であるということ。また唄の後半では「親の言うことは胸に留めるべき」と我が子に向けた親の願いも唄われている。
成り立ちは不明だが、昔は集落で鶏を飼っていた家庭が多かった時代背景が関係しているとも言われる。八月踊り唄は集落が変わっても似た歌詞が歌われることが多いが、「鶏卵」は西田集落だけのもの。親にも子にも投げかけられるあたたかな歌詞の力もあって、大切に保存・継承されている。
毎週木曜日19:30〜小俣集会所にて「奄美八、六会」というグループで鶏卵をはじめとした、奄美の古見方地区で踊られている28種類の唄を踊る。誰でも参加自由
現在、「鶏卵」を定期的に披露しているのは主に8月15日夜と、豊年祭。複数の女性陣によるチヂン(太鼓)のリズムに合わせて、男性陣と女性陣が唄の掛け合いをしながら踊り、時折男性陣がハト笛で盛り上げる。
チヂンが途中でテンポを速めたら終盤に突入するというスタイルだ。昔は電気が無く、夜には踊らなかったことから、今でも日中から日没にかけて踊る形が根付いているという。
こうした行事では浴衣やカスリの着物を着て踊るが、近年は海外や県外に招待される機会が増え、その際は宣伝も兼ねて「本場奄美大島紬」を着て披露するのだとか。
課題は若手の伝承者が少なくなってきていること。集落では小中学校に働きかけて伝承の機会を持つことなどの計画もしている。
NISHIDA-西田集落-
地元呼称:ニシダ、シタラガチ 世帯数:65 人口:120
太平洋に面した古見方(こみほう)地区にある8集落の1つ。「シマ唄と踊りが大好きで陽気」な人が多いと言われ、昔は男性が自己流で三味線を弾いて女性にアプローチしていた。