節田マンカイ
節田集落だけに今も残る旧正月行事は男女の出会いの場
- 手だけではなく、体から左右に揺らすようにしてね
- 前の人と息を合わせて寄せては返すように手を動かして
座して並び、向かい合うのは晴れ着姿の幼馴染。時にからかいあうように唄を交わし、たゆたう波のように体を揺らし、手を打ち合う―。
節田集落の伝統行事「節田マンカイ」。長い歴史を聞くうちに、そんな光景が思い浮かんだ。農業が盛んで、「まじめで働きもの」として有名だった節田のシマッチュたちが心待ちにしていたイベントが「節田マンカイ」。それは正月を祝う行事であったと同時に、男女の出会いの場でもあったのだという。
「マンカイ」は、かつては笠利町全域で行われていたが、現在続いているのは節田集落のみ。2008年に県の無形民俗文化財に指定された。旧暦の1月1日に男女が向かい合って座り、男女交互の掛け合いでチヂン(太鼓)と三味線に合わせて唄を歌いながら手踊りをする。
マンカイとは「招く」の意味。起源は定かではないが、幕末に奄美の日常を絵で記録した名越左源太の「南島雑話」に、似たような行事の絵がすでに記されている。
現在継承されているマンカイの唄は3曲。締めの六調が終わると皆でお酒を飲みながらお正月料理を食べて和む。一番のごちそうは「アザンヤセ(アザミと豚骨の煮物)」。
アザミを食すのは、笠利町では節田集落のほか佐仁集落だけだ。下処理に手間がかかり、葉と茎のトゲを手作業でとり、二日ほど干した上でゆでてあく抜きをする。すると煮込んでもシャキシャキとした食感が残り、なんともおいしい旧正月料理に変身する。
シマッチュの楽しみであった伝統行事「節田マンカイ」には、いま他集落や観光客も鑑賞に訪れる。課題は今後運営の中心となってくる若い世代への継承。踊りだけでなく唄もしっかりと伝え残していくため、月に2回の練習の場を設けて育成を図っている。
SETTA-節田集落-
地元呼称:セッタ、スッタ 世帯数:297 人口:505
奄美空港からほど近く、広い平地に恵まれた農業・畜産業が盛んな集落。奄美を作ったといわれる神様が降臨した地「アマンデー」や立神などのパワースポットにも囲まれている。