シマ自慢田いも(たぁまん)

子孫繁栄の縁起物。水の豊かな土地が作り出す「たぁまん」

奄美大島の祝いの席に登場する、里芋に似たおいしい芋にであったら、それは「屋仁のたぁまん」かもしれない。「田(たぁ)芋(まん)」とは、その名の通り浅く水の張った水田で作る芋のこと。
南西諸島で作られていて、稲作が盛んだった時代に奄美でもよく栽培されていた。日照りが続いて米が採れないときでも、たぁまんは安定して育つので非常食としても利用されてきたという。しかし薩摩藩制時代に奄美の水田の多くはサトウキビ畑に変わり、必然的にたぁまんの生産量も減ってしまった。

たぁまんを切り分け、種を作っている様子

屋仁のたぁまんは昔から有名だった。通常は白い芋が、屋仁で作ると赤みがかったピンク色になることから「赤まん」とも呼ばれる。味も、もちもちとして美味。他の土地で栽培すると芋の色は白色になるそうなので不思議だ。
年中収穫できるように栽培調整をしているが、旬である11月~12月には集落の入り口にある「やにまんてん市場」に、たぁまんを求めて集落外から人が押し寄せてくるという。

たぁまんは蒸してそのまま食べるか、天ぷらや島ザラメで煮て食べるのが一般的。鉄分が多く、食物繊維が豊富なことから女性にも大人気だ。また茎の部分は「クワリ」と呼ばれ、油で炒めたり味噌汁の具にしたり、酢の物にして食べてもおいしい。葉は畑の肥やしに使えるので、「捨てるところのない野菜」と生産者は話す。

収穫直後のたぁまん

親芋の周りに小さな子芋がいくつもできる姿が「子だくさん」を連想させることから、結納、出産祝い、百日祝いなどのお祝いの場で子孫繁栄の縁起物として振舞われることも。水の豊かな土地が生み出す、屋仁集落にはなくてはならない自慢の野菜である。

area_KASARI

YANI-屋仁集落-

地元呼称:ヤン 世帯数:103 人口:201

奄美市笠利町の西側に位置し、周囲を山に囲まれている。昔から水が豊富で稲作が盛んな地域。高台にある蒲生崎(がもうさき)観光公園展望台から、天気が良ければトカラ列島の島々を見ることができる。

時期

年中購入可

POINT

やにまんてん市場で茹でた「たぁまん」が買える

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