元外交官が挑む「奄美産バニラ」の夢!バニラと奄美の素材をつかったスイーツが楽しめるAMAMIバニラファームカフェPole Pole

島食

2026/03/17

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田中 良洋

奄美空港から車で5分。バニラと奄美の素材をつかったメニューが並ぶカフェがあります。その名もAMAMIバニラファームカフェ Pole Pole。

Pole Poleとは、スワヒリ語で「ゆっくり、ゆっくり」のこと。たんかんやバナナなど、奄美大島ならではの果実の樹が並ぶ敷地にあるこのカフェは、木漏れ日が差し込み、心地よい風が吹き抜けます。テラス席に座っていると、思わずのんびりしてしまいそう。

穏やかな時間が流れるカフェですが、その裏には奄美大島出身で、元外交官の林晋太郎さんの壮大なチャレンジがあります。奄美大島でなぜバニラのカフェを開いたのか、その理由をお伺いしてきました。

森の中でバニラをつかったメニューが楽しめる

AMAMIバニラファームカフェ Pole Poleは、2023年10月にオープンしました。バニラと奄美の素材をつかったメニューを提供することがコンセプトで、看板メニューはバニラと奄美大島産の卵とざらめを使ったプリン!他にもバニラ香るりんごチーズピザや、バニラのジェラートなど、いろんなバニラメニューが楽しめます。

ランチではハンバーガーやガパオライス、ドリアなどが楽しめます。金曜日限定にはなりますが、本場仕込みのスパイスカレー「ビリヤニ」が味わえることも!

木のぬくもりを感じるオシャレな店内には、アフリカの雑貨が並びます。店内にも8つほど席がありますが、オススメなのは外の席。広大な敷地にテラス席が8つ、屋外席は24席もあります。

テラス席にはプラレールや絵本、シャボン玉などを用意してくれています。お子様連れでも気兼ねなく、文字通り「ポレポレ(ゆっくり)」とした時間を過ごせます。

国家公務員を辞めてバニラ農家に転身

なぜ奄美大島でバニラなのか。それを説明するには、林さんのキャリアを紐解かないといけません。

林さんは高校まで奄美大島で育ち、大学を出たあと国家公務員として農林水産省に就職しました。転機となったのは2019年。外務省に出向し、タンザニアで外交官をすることになったのです。

「タンザニアの景色を見たとき、奄美と似ているなと思いました。パパイヤや島バナナ、月桃のようなものまで生えていて。懐かしい気持ちになったのを覚えています」

タンザニアでバニラ農家の支援をしていた林さん。しかし、赴任して1年が経とうとするとき、コロナウィルスによるパンデミックを迎えます。

「コロナ禍は、今後の人生について考える時間になりました。国家公務員の仕事はやりがいもあったし、捨てがたいキャリアだったけど、生まれ故郷に貢献するほうが今後の人生が豊かになると思ったんです。先祖から受け継いできた島を、将来に向けて残していくことをやらないといけないと感じました。」

環境がそっくりなタンザニアで栽培できていたバニラを、奄美大島で栽培できれば島の新しい産業になるかもしれないと思い、2022年に農林水産省を退職。「農業を中心に島おこしをしたい」という想いを胸に奄美大島に戻ってきました。さっそく農地を借り、バニラビーンズの栽培を始めましたが、バニラは栽培から収穫まで3年ほどかかります。その間にバニラの知見を深めるため、AMAMIバニラファームカフェPole Poleをオープンしました。

店内に飾られた絵や装飾は、きっかけをくれたタンザニアのもの。金曜日にビリヤニを提供しているのも、金曜日にビリヤニを食べるタンザニアの文化にならって始めました。このビリヤニやチャイは、タンザニアの人も驚くほど本場の味そっくりだそうです!

奄美大島産のバニラを届けるために

バニラは、スパイスの女王と呼ばれるほど高価で貴重なものです。日本では100%輸入したものを使っていますが、物価高や人件費の高騰で年々使いづらくなっています。国産のバニラができれば喜んでもらえるはず。

バニラの収穫ができるまでに、エターナルという屋号でバニラの輸入販売も始めました。いずれ奄美産のバニラができたときのため、販路をつくっておくことが目的です。

外交官時代の知見を活かし、インドネシアのバニラ農家から直接取引をしています。世界のバニラの農家の環境は厳しいもの。換金作物として栽培されますが、生産者に十分な利益が届いていません。

林さんが輸出のやり方を教えることで、バニラ農家にとっては適切な価格で取引ができ、林さんにとっては日本でのお客様とのご縁を築くことができる。奄美産バニラができたときに多くの人に使ってもらえるよう、種まきをしています。

「取引をしているお客様の多くが奄美産バニラを楽しみにしてくれていますし、ぜひ使ってみたいと言ってくださっています」

2026年現在、栽培をはじめて3年経ち、2025年5月にようやく花が咲きました。ですが、これで終わりではありません。実を収穫し、キュアリングという乾燥、発酵熟成する工程を経てはじめてバニラビーンズができあがります。

天然のバニラの香りは、バニラエッセンスとは比べ物になりません。香りの深さや立体感が生まれます。これからキュアリングの方法を試行錯誤していきますが、奄美大島産のバニラがどんな香りになるのか、今から楽しみです。

バニラを通じて奄美大島を知ってもらいたい

「農業をしたいと思った人の選択肢を増やすことが大事だ」と林さんは話します。

サトウキビ、パッションやマンゴーなど、奄美大島の特産品はたくさんあり、もちろんそれはこれからも続けていく必要があります。そのためにも、農業に携わる人が増えないといけません。いろんな農業の可能性を示すことで、新たに農業をしたいと思う人が増えることが林さんの願いです。

「バニラはコラボレーションの余地がたくさんあると思います。スイーツにしてはじめて真価を発揮するので、サトウキビやフルーツと相性がいいです。今後、バニラを通じて奄美を知ってもらうきっかけになれば嬉しいですね」

奄美大島は海はもちろんきれいですが、世界自然遺産になったのは山の生物多様性のおかげ。人々のなりわいを支えてきたのは山だと林さんは考えます。AMAMIバニラファームカフェPole Poleは山の中にあり、奄美大島特有の植物、鳥、虫と出会えます。森に囲まれたカフェで、自然の豊かさ、魅力を感じながら、奄美大島の新しいチャレンジを味わってみませんか。

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この記事を書いたフォトライター

田中 良洋

田中 良洋

映像エディター/予備校スタッフ 兵庫県出身。奄美群島の文化に魅かれ、2017年1 月に奄美大島に移住。島暮らしや島の文化を伝えるために自身のメディア、離島ぐらし(https://rito-life.com/)を運営する。