ネイチャーワンダーアイランド~vol.7|Road to 世界自然遺産 世界遺産とは??
島コト
2019/06/22
奄美野生生物保護センター
こんにちは、奄美野生生物保護センターの千葉です。これまで本シリーズでは、奄美の自然や生きものについてお伝えしてきました。
ネイチャーワンダーアイランド~vol.1|なぜ奄美大島には希少野生生物が多く残っている?
ネイチャーワンダーアイランド~vol.2|マングローブってどんなところ?
ネイチャーワンダーアイランド~vol.3|外来種の実態、防除の最前線
ネイチャーワンダーアイランド~vol.4|世界中でここにしかいない! 奄美の多様な鳥たち
ネイチャーワンダーアイランド~vol.5|奄美の自然を楽しもう!
ネイチャーワンダーアイランド~vol.6|アマミノクロウサギを救え! 交通事故に遭ってしまうアマミノクロウサギたち
最後に今回と次回の2回にわたり上級編として、現在私たちの住む奄美大島と徳之島が候補地となっている世界自然遺産のことについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。少し難しい内容を含みますが、最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
それでは、ここからはクイズ形式で世界遺産のことについて確認していきたいと思います。最初の問題です。ずばり
答えは、
通称「世界遺産条約」に基づいて「世界遺産一覧表」というリストに記載(登録)された文化財や自然地域のことで、国家や民族を越えて人類が共有し、次世代に受け継いでいくべき価値を持つものがリストに記載(登録)されます。
いわば、「人類共通の宝物」で将来に残していくべきものが世界遺産です。
さて、次の問題です。その世界遺産ですが
世界遺産には「文化遺産」「自然遺産」「文化と自然の要素を併せ持つ複合遺産」の3種類があり、2018年7月時点で文化遺産845件、自然遺産203件、複合遺産35件が登録されています。
ほんの一例ですが、エジプトのピラミッド、フランスのモン・サン・ミッシェル、エクアドルのガラパゴス諸島、オーストラリアのグレートバリアリーフ、ペルーのマチュピチュなどが挙げられます。
このうち日本国内には、文化遺産18件、自然遺産4件が登録されています。
続いての問題です。
答えは、屋久島(平成5年12月)、白神山地(平成5年12月)、知床(平成17年7月)、小笠原諸島(平成23年6月)の4箇所です。
現在、奄美大島と徳之島は沖縄島北部(やんばる)、西表島を合わせた4島で、日本国内5番目となる世界自然遺産への登録を目指しています。
世界自然遺産の基準
もし私たちの住む島が世界遺産に登録されるとしたら、それは望ましいことでしょうか?望ましくないことでしょうか?
ここでクイズを一休みして、この世界遺産にはどのようにすれば登録されるのか、世界遺産になるための条件や課題などについて考えてみたいと思います。
世界遺産として登録されるためには、大きく分けて2つの条件をクリアーしなければなりません。
1つは世界遺産としての価値があること、もう1つはその価値を将来にわたって守っていくことができることの2点で、この両方の条件を満たすことを証明しなければ、世界遺産として登録されることはありません。
1つめの世界遺産としての価値については「世界遺産条約上の登録基準を満たすこと」「十分な規模と必要な要素を持っていること」さらには「既登録の世界遺産等と比較して、その価値が唯一無二の価値を持っていること」を明らかにすること。
つまり、そこだけにしかない価値というものを科学的に証明することが必要です。
この登録基準について、自然遺産においては以下のような項目があり、このうち奄美大島及び徳之島を含む4地域は、「生物多様性」というカテゴリーの基準を満たし得るとして、その価値の証明を行おうとしています。
2つめの、将来にわたって守っていくことについては、世界遺産として登録される地域は国の法的措置等による保護地域の指定などの担保が必要とされますが、平成29年3月、奄美大島及び徳之島を含む地域を奄美群島国立公園に新規指定したことにより、一定の条件を満たすこととなりました。
一方で、保護地域を指定するだけでなく、様々な課題に対応して保護管理のための仕組みや体制が整っていることも求められます。
このように世界遺産は、ただ手を挙げれば登録できるものではなく確かな価値の証明とその価値をずっと守っていくことができるかということを証明する必要があり、道のりは決して平坦ではありません。
今回はここで終了とさせていただき、次回は私たちに課せられた課題「なぜ世界遺産への登録を目指すのか」などについて考えていきたいと思います。
この記事を書いたフォトライター

奄美野生生物保護センター
奄美群島の自然や生き物に関する展示を行う環境省の施設。
野生生物の調査、外来種対策、自然観察会を通した普及啓発や世界自然遺産登録に向けた取組などを総合的に行う拠点にもなっている。
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
休館日:毎週月曜日(祝日を除く)、年末年始(12月29日~1月3日)
住所:鹿児島県大島郡大和村思勝字腰ノ畑551番地
電話:0997-55-8620
管理協力: 鹿児島県自然保護課、奄美群島12市町村