ネイチャーワンダーアイランド~vol.3|外来種の実態、防除の最前線
島コト
2019/02/08
奄美野生生物保護センター
うがみんしょ~らん(こんにちは)!奄美野生生物保護センターの牧野です。
第3回目、私からは外来種のことと外来種防除の最前線について紹介します。
ネイチャーワンダーアイランド~vol1|なぜ奄美大島には希少野生生物が多く残っている?
ネイチャーワンダーアイランド~vol2|マングローブってどんなところ?
ネイチャーワンダーアイランド~vol3~外来種の実態、防除の最前線
皆さんは外来種という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。
外来種とは、もともと特定の地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生き物のことを指します。奄美大島で例えるならば、フイリマングース、アメリカハマグルマなどが当てはまり、この2種の生き物は外国から持ち込まれました。
▲外来種フイリマングース
▲外来種アメリカハマグルマ
外来種の反対の言葉は「在来種」といい、在来種とは、もともと特定の地域にずっといる生き物のことを指します。奄美大島では、アマミノクロウサギ、アマミエビネなどが在来種です。
▲在来種アマミノクロウサギ
▲在来種アマミエビネ
奄美大島に外来種がいるとどうなるのでしょう?一見私達には関係ないと思われる外来種ですが、実はとても大きな問題があります。外来種の実態をフイリマングースとアメリカハマグルマを例に挙げて説明します!
フイリマングースは植物でも、動物でも、何でも食べる生き物です。フイリマングースは本来、ハブの駆除などを目的として奄美大島に持ち込まれましたが、人々の期待に反して、ハブではなく、アマミノクロウサギなどの在来種を食べ始めてしまいました。
▲在来種リュウキュウアオヘビをくわえるフイリマングース
また、フイリマングースは過去に農作物に被害を出したことがあります。私達の食卓に並ぶはずの野菜や黒糖(原料のさとうきび)がなくなってしまったとしたら、とても困りますよね。
アメリカハマグルマはとても強靱で環境への適応力がとても高い植物です。在来種の植物が根づいている場所に定着してしまうと、在来種の植物を押しのけてしまいます。さらに、在来種の植物に依存していた生物がいなくなってしまうこともあり、辺りの景観を一変させてしまう恐れがあるのです。
▲在来種の植物を押しのけるアメリカハマグルマ
奄美大島にはびこると困ってしまう外来種…。外来種がはびこることに手をこまねいてはいられません。次は防除の最前線について説明します!
フイリマングースの防除は、フイリマングースを奄美大島から完全排除し、奄美の生きものたちを守ることを目的として、2005年から環境省がマングース防除事業を開始し「奄美マングースバスターズ」を結成しました。
▲奄美マングースバスターズ
奄美マングースバスターズは日々、捕獲わなの点検やマングース探索犬と共に、マングース捕獲作業を行っています。奄美マングースバスターズの活動のおかげで、多い時には約1万頭もいたと推定されるフイリマングースを、現在は50頭以下にまで減らすことができました。嬉しいことに、フイリマングースの減少に伴い、奄美大島における多くの在来種の生息域拡大も確認されています。
▲奄美マングースバスターズのわな点検
アメリカハマグルマも現在奄美大島では奄美野生生物保護センター、市町村、地元の小・中学校など、みんなで協力して駆除を実施しており、奄美大島の自然景観を守る努力をしています。
▲アメリカハマグルマ駆除の取り組み
一度定着してしまった外来種を排除することは大変な作業ですが、人が持ち込んでしまったものは、人が何とかしないといけないと思います。
奄美大島の自然、生き物を守るため、また、世界に自慢できる奄美大島になるようにみんなで頑張りましょう!
この記事を書いたフォトライター
奄美野生生物保護センター
奄美群島の自然や生き物に関する展示を行う環境省の施設。
野生生物の調査、外来種対策、自然観察会を通した普及啓発や世界自然遺産登録に向けた取組などを総合的に行う拠点にもなっている。
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
休館日:毎週月曜日(祝日を除く)、年末年始(12月29日~1月3日)
住所:鹿児島県大島郡大和村思勝字腰ノ畑551番地
電話:0997-55-8620
管理協力: 鹿児島県自然保護課、奄美群島12市町村