期間限定! 太陽と立神がつくる夕陽の絶景 大和村戸円のロウソク岩
島景
2017/01/12
小海ももこ
トカラ馬もいる、戸円という集落
奄美大島の西海岸に伸びる大和村に、戸円(とえん)という集落がある。見上げるような山を背負い、前面には東シナ海の水平線が広がっている。
戸円は潮風が強く、冬はサーフスポットとして人気。
また、トカラ馬(鹿児島県トカラ列島で飼養されてきた在来馬)が飼われており、時々、海辺や廃校になった小学校の校庭で見ることがあるだろう。
秋口だけの奇跡、戸円の絶景夕日を求めて
さて、戸円の海には一本の岩が突き出ている。
それは、立神(たちがみ)とか立瀬(たっせ)とか呼ばれており、集落のシンボルと言っても過言ではない。その岩が10月下旬から11月上旬の間、沈む太陽の位置のタイミングによって、ロウソクのようになるそうなのだ。
10月24日、私は日没直前の18時までに到着しようと車を走らせ戸円に向かった。
戸円集落の寸前の断崖に「戸円ふれあいパーク」という展望スペースがあり、立ち寄ると、遠くに霞む岬と、国定公園のヒエン浜と、ニョキッと立つ岩と、戸円集落が一望できた。
この日は波もあり、ザザーンという音がすぐ近くに聞こえてきた。風がとても気持ち良い。
日が落ちる前に、慌てて戸円集落で車を降りた。先客はサーファーと、それを見守る女の子。海岸沿いの岩場に向かう歩道を歩いてみたが、この時期ではまだ太陽と岩は重ならない。角度を考えながらウロウロしたところ、砂浜の上から見えそうな気がした。
日が落ちてきたが、雲が厚くなってきたので夕陽が見られるか心配だった。しかし、ちょうど雲の切れ間から太陽が覗く。その瞬間、確かに岩と太陽がロウソクを描いた。
普段、太陽が動いていると目で見て分からないのに、こんな時は本当に早くてびっくりする。「ロウソク岩」である時間はほんの一瞬。慌ててシャッターを切ったが撮ったのは数枚だけだった。
あっと言う間に、その大きなロウソクは岩に戻った。太陽が沈んだ後の空も美しく、風は相変わらず気持ちが良い。
また来ようと思った。地球の自転によって毎日少しずつ太陽の沈む位置は変わっていくし、沈む位置によってそのロウソクの姿は違うだろう。
車に乗り込みながら、次に来る時はもう少し時間に余裕を持ってこよう、海岸の正面にあるウェスタナーズカフェで優雅にお茶でもしながら夕陽を待とうと思った。
この記事を書いたフォトライター
小海ももこ
新潟県十日町市生まれ。地方紙記者、農業、バックパッカーなどを経て、旅行雑誌や旅ガイドシリーズの編集に携わる。同時に、野外フェスの企画運営や、NPO法人で海外教育支援、震災復興支援を行う。2016年4月から奄美大島に移住。大和村地域おこし協力隊に就任。