大島紬を見て知って楽しむ「夢おりの郷」で感じた、伝統と未来
島遊
2018/04/04
秋葉 深起子
奄美大島は自然が豊かな場所ですが、それだけでなく、文化や伝統産業にも特色があります。
まるでテーマパークのように伝統文化を知りながら楽しむことがのできる、奄美大島にきたらぜひ寄っていただきたい場所をご紹介します。
島の伝統文化を楽しむテーマパーク
奄美市名瀬から笠利町方面に国道58号線を走り、龍郷町のホームセンター「ビックツー」を通り越し、次の交差点をすぎると大きな看板があります。
「本場奄美大島紬」発祥の地、龍郷町にある織元「夢おりの郷」です。
ここでは、
●大島紬の反物、おみやげ小物などの販売
●大島紬の製造工程見学
●泥染めや機織りなどの製造体験
●着付け体験
などが楽しめます。
お子様が楽しめる貝殻フレーム作り体験などもあり、まさに”島の伝統文化を楽しむテーマパーク”。
製造工程を見学したり、着付けなどの様々な体験をしたりしながら大島紬の反物を見ることができます。
伝統的な大島紬から、夢おりの郷オリジナルのオーロラ染めまで、織元ならではの大島紬に出逢えます。
世界最高峰の技術を身近で感じることのできる場所
奄美が発祥の地である「大島紬」は、ペルシャ絨毯、フランスのコブラン織りと並んで「世界三大織物」といわれています。
大島紬の製造工程は、全部で約40工程以上あります。1つの反物を作るのに1年もの期間を要するものもあるのです。
この“世界一緻密な織物”と言っても過言ではない、大島紬が出来上がるまでの製造工程。
残念ながら、近年では簡単に見ることができなくなってきています。
そんな中、ここ夢おりの郷は、大島紬の「図案作成・糸の準備・糸くり・のりばり・締めばた、泥染め・加工・はたおり」のほとんどの工程をどなたでも見学することができる貴重な場所なのです。(※一部体験も可能)
(丁寧に教えてもらいながら、機おり体験)
(奄美でしか体験できない泥染め体験)
大島紬の織元さんが、なぜ“見学したり体験できるテーマパークのような場所”を作ったのか
「本場奄美大島紬」の伝統を守るだけでなく、 未来へ繋いでいくための取り組みを積極的に行う、「株式会社夢おりの郷」の代表、南晋吾さんにお話を伺いました。
「大島紬だけでなく、現代では着物を楽しむ機会が少なくなりました。必然的に生産数は減り、大島紬の織元も“それだけではやっていけない”のが現状です。
”世界に誇る素晴らしい仕事”を残していくためには、大島紬づくりに携わる職人たちの工賃を守り、上昇させていたくために様々な取り組みをしていく必要があります。
まずは、大島紬を未来に繋いでいくために、”若手職人たちを育成できる環境を整えること”
今の時代背景や、それぞれのライフスタイルに合った仕事環境を整えるなど、環境や処遇改善をしていき、 お互いを支えあうことで”このような形(新しい働き方の環境)でも、伝統工芸を守り繁栄していける”というようなモデルケースを作ること」。
(別業界から大島紬の業界に飛び込んでくれた若手職人)
「そして、数ではなく、良い商品が適正に消費者の手元に渡り、職人の工賃へ反映できるような仕組みづくりにも力を注いでいきたいと思っています。」と様々な視点から教えてくださいました。
(南さんら若手担い手が結束し、クラウドファンディングで、若手職人たちが作る大島紬を直接お届けするためのプロジェクトを企画し、見事目標金額達成。応援してくださった全国の皆さんへお送りする大島紬や小物制作に取りかかっているそう。)
これらをより多くの方々に伝えるために、気軽に体験できるテーマパークを運営しているのだそうです。
現在、南社長は夢おりの郷の運営のほかに、
本場奄美大島紬協同組合青年部としての活動や、
海外向けのJAPANブランド「amami oshima tsumugi」などなど。
自社のみならず、大島紬業界全体のために毎日奮闘しています。
「やりたいこともたくさんありますが、 少しでも大島紬に興味を持ってくださる観光客の方に直接お会いしてお話ができることも僕にとって大切なのです」と、南社長。
「それと同時に“大島紬や和装を楽しみたい”という方々に対しての、環境も作っていかなくてはいけません。
・着付けを習得できる場所をつくること
・大島紬の着用機会をつくること
・大島紬を着て奄美大島を楽しめるスポットをつくること
まさに“紬が香る街”の環境を作り、その姿や光景を、観光客の皆さんが楽しみに奄美大島へ来てくださる。・・・そんな大島紬の本場奄美大島になってくれたら嬉しいと思っています。」
(夢おりの郷には“本場の奄美で一度大島紬を着てみたかった”という観光客の方々も多く訪れる)
南社長のお話を伺い、私自身も大島紬を着て街を歩くと声をかけてもらうことが多く、
着ている人はもちろん、それを見るほうの人まで、笑顔になるのだということを思い出しました。
取材の前、「写真を撮りましょう」とお声がけをすると、
「せっかくだから」と、ご家族全員がさらっと大島紬を着つけて集まってくださいました。
南社長ご一家の皆さんのように、「ちょっとお出かけするから大島紬を着ましょう!」と、日常的に和装を楽しめるような大人のたしなみを身に着けたいと感じました。
伝統の大切さを守りつつ、 新しい取り組みや他業界とのコラボレーションにも意欲的な南社長のお話は、 大島紬に対する価値観さえも大きく変わってくる貴重な時間。
島の未来を熱く語る南社長が運営する「夢おりの郷」。
タイミングが良ければ、社長のお話も直接伺えるかも!
ぜひお気軽にお立ち寄りください。
この記事を書いたフォトライター
秋葉 深起子
RDA(Relaxing Days Amami)ツアースタイリスト。東京でカラー&イメージコンサルタントとして、企業研修や講演、プロダクトデザインのカラー提案、フォトスタイリング等を行う株式会社アンドカラーを設立。2017年「五感を刺激する大人のための奄美旅」をモットーに、奄美と出会えてよかったと思えるような旅やイベントを企画運営事業を開始。