奄美・住用の地モノ「モクズガニのうどん」 いも~れ、マングローブ茶屋へ!
島食
2019/01/17
くもん ともこ
これは、奄美市住用町で獲れた「モクズガニ」です。
甲羅の幅は7~8cm、大人の手のひらから軽くはみ出す大きさがあります。イワガニ科モクズガニ属のカニで、有名な上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)の仲間。姿かたちもよく似ています。普段は山奥や川に住んでいて、秋から冬にかけて産卵のため海に下ってきます。
川の多い奄美大島では、昔からエビやカニなど川の恵みをいただく食文化があります。
特に奄美大島中部の豊かな山間にある住用町ではそういった豊かな食文化が残っています。
川の大きな恵み、モクズガニはスーパーや魚屋さんで見かけることはほぼありません。しかし、住用町では、♪ガンよガンよ、すみようのガンよ~♪と島唄に歌われるほど身近なカニなのです。(※「ガン」とは、島の言葉で「カニ」のこと)
島人が愛するモクズガニ、どんな味なんだろう?気になりますよね!今回は、そんなモクズガニを一年中味わえるお店があると聞き、早速足を運びました!
マングローブを見つめて、もうすぐ半世紀の老舗
奄美市名瀬中心部から車で約40分ほど。奄美市住用町の黒潮の森マングローブパーク近くにある、マングローブ茶屋です。この大きな看板が目印。
創業1973年(昭和48年)。マングローブ観光案内の老舗です。
ロッジ風の建物が迎えてくれます。レストランはこの建物の中です。
ご案内頂いたのは、代表者の久保ひろしさんと、お店を切り盛りしていらっしゃる保園美さん(写真右)。(写真左は筆者)
お二人ともNPO法人奄美大島自然体験活動協議会の活動もされていて、久保さんは理事長を務めていらっしゃいます。
どこか懐かしい店内
店内には靴を脱いで上がります。中央には大きな柱。長年土の中で眠っていたベニタブの木を掘り出して、洗って磨いたものとのこと。
広い座敷にはのんびりした空気が漂っていて、親戚の家にいるような錯覚を覚えるほど。なんだかくつろげます。
早速モクズガニを使った「かにうどん(1,000円)」を注文。
住用では「かに」と言えば「モクズガニ」を意味するぐらい、一般的なのだとか。
待つ時間もまた楽しい♪
うどんを待つ間は窓からの眺望を満喫しましょう。役勝川の周りに広がるマングローブ原生林を一望できます。
奄美市住用町のマングローブ原生林は、太平洋につながる住用川と役勝川の河口域に発達した広大なもので、沖縄県西表島に次いで日本第二の規模を誇ります。平成29年(2017年)3月7日に奄美群島国立公園特別保護区に指定されました。
国指定天然記念物のリュウキュウアユなど貴重な動植物が数多く生息し、生物多様性の高いエリアです。
この日は川でカヌーを楽しむ人々もよく見えました。昔は生活物資を運ぶ船が上り下りしていたそうですよ。
何から食べる?
わくわくしながら待つこと約30分。出てきました、「かにうどん」!
潮の香りではない、川の香りでもない、これまでにかいだことがない匂いです。でもこれは、おいしいモノの匂いだと直感します♪
「どんな風に食べるんだろう…」とお椀を前にふと考えていると、お店の方から「カニをとなりのお皿に移して、まずはうどんからどうぞ」とアドバイスが。
カニを移すとこんな感じ。カニがいなくなった丼は、うどんとアオサのみという潔さ。
このうどんは、久保さんがカニのスープによく合うものを探し求めて試行錯誤し、ようやくたどり着いた讃岐うどん。このために香川県から取り寄せているそうです!
カニの匂いとアオサの香りのハーモニーがたまりません。スープに浮かぶオレンジ色のカニ油と薄黄色をしたカニ味噌が食欲をそそります。
スープを一口。シンプルな塩味で、スッキリしていながらもコクがある、なんとも言えない奥深さ!海の幸とも川の幸とも違う、山と海の間の味とでも言ったらいいでしょうか。マングローブの味そのものです。
このスープにコシのある讃岐うどんもピッタリ。食べ応え抜群です。
いよいよカニの時間です
甲羅の朱色が美しい…!甲幅は7~8cmあります。
甲羅や足を外して食べやすくしたら、バラバラになっちゃいました。
甲羅の中に見えるウニみたいな橙色をした部分がカニ味噌です。「よく肥えとる!」と久保さんお墨付きの1匹♪
カニ味噌は、ねっとりしていて、なめらかな舌触り。濃厚でうま味が強く、コクがあります。ちょっとの量ですごい満足感です。
臭みは全くありません。お酒も合うな~きっと。
胴の部分は、ハサミで小さく切って殻ごと食べるそうで、教わった通りにバリバリもぐもぐ。
カニの身、味噌のうま味とコク、殻の香ばしさが混然一体となって、うまいことこの上なし。
モシャモシャに毛が生えた蟹爪は、甘みのあるほろほろとした真っ白な身がびっしりです!
黙々とカニをやっつけ続け、食べ終わった時は、食べ始めから1時間が過ぎていました。
ごちそうさまでした。あぁおいしかった、また食べに来ます、かにうどん。
モクズガニ+うどん=ロングセラー
レストランのメニューを作る中で、「住用で獲れた地のもの」特に、「昔から自分たちが食べているもの」を出したいと考えて、住用で昔から親しまれていたモクズガニを選び、うどんと組み合わせたそうです。
かにうどんは創業当時からのメニューとのことですから、半世紀近いロングセラーですね!
マングローブ茶屋のモクズガニは、すべて地元で漁獲された天然物です。
漁期は秋から冬ですが、旬の時期に漁獲されたモクズガニを1匹ずつ丁寧に冷凍保存しているので、1年中モクズガニのうどんを楽しむことができます。
ちなみに、天然の手長えびを使った「えびうどん(1,000円)」もありますよ!他にも定食、丼・ご飯もの、麺類と和洋中の豊富なメニューが揃っています。
レストラン営業時間は、冬9:00~17:00、夏9:00~17:30。
奄美大島ではランチとディナーの間に一旦店を閉めるところが多いので、ランチタイムを外しても食事OKって嬉しいです。
かにうどんの後は、腹ごなしにマングローブ遊歩道(無料)もおすすめ。
マングローブ原生林や役勝川に住む生き物を間近に観察できます。
入口は、マングローブ茶屋の脇。目印は、国道沿いに立つ緑色の案内板です。
奄美の自然が育んだ天然モクズガニを存分に味わえる「かにうどん」。
奄美大島を訪れた際には、住用町まで足を延ばして、ぜひみしょれよ~(召し上がってください)!
この記事を書いたフォトライター
くもん ともこ