天の川ハンターと行く奄美星空紀行VOL.5| 瀬戸内町エリア
島景
2019/01/21
しーまブログ編集部
都会では決して見ることのできない美しい星空の魅力について、奄美大島の星を追いかけている「天の川ハンター」荒木マサヒロさんに、全6回でレポートしてもらいます。
今回は第5回目、奄美大島の南に位置する瀬戸内町エリアを巡ってみましょう。
いまから紹介する星空に実際に会いに、ぜひ足を運んでみてくださいね。
■天の川ハンターと行く奄美星空紀行(全6回)■
魅力ある天の川の撮影拠点のひとつとなっている、瀬戸内町。
リアス式海岸の起伏がある地形には窪んだ入り江があり、シマ(集落)が広がっている。
日が落ち始めると、瀬戸内町内の伊須湾や、大島海峡をはさんで対岸にある加計呂麻島(かけろまじま)にも明かりが灯ってくる。
その明かりは眩しいくらいの明るさとなり、次第に海岸沿いに広がるシマの存在を示すようになる。
明かりを放つシマを確認しながら、手元のスマートフォンで集落名を調べていく。
友人や知人がいるシマの明かりだとわかると、明かりはただの明かりではなくなり、そこには温度が宿る。
明かりに温もりを感じながら、そのシマの頭上に輝く星々や天の川を眺めるのは、格別な味わいである。
心に響いてくるような天の川の鑑賞スタイルが、ここ奄美大島にはある。
ぼくが常々「奄美大島の天の川は一番だ」と言っているのは、つまりこうした情景であり背景なのだ。
山を切り崩すことなく、その地形のまま万物を尊ぶ集落がある。
奄美大島の自然と人と宇宙の調和がもたらすこの情景は絶品そのものだ。
たくさんある観望ポイントから、観光客が気軽に行ける駐車スペースを備えた観望ポイントをピックアップして案内しよう。
天の川は待っていた!
〜 古仁屋港 A・コープ前(旧フェリー乗り場)
撮影日時:2018年7月9日1時9分
瀬戸内町古仁屋(こにや)で最も人の出入りが多く、賑わう場所と言ったらここ。
日中と違って人通りがなくなった真夜中の「せとうち海の駅」の岸壁には、業務を終えた「フェリーかけろま」、水中観光船「マリンビューワーせと」が停泊している。
夜になると活動を始めるのが、港の入り口を示す赤と緑の灯台だ。船舶は赤を右に、緑を左に見て港に入ってくる。
2018年の夏、集落の街灯の灯りをライトダウンして星空を楽しむ奄美初のイベント「親子で天の川を見よう 西阿室(にしあむろ)」を、集落の協力を得て開催した。(2019年も予定)
ぼくは参加者のみなさんに「さそり座が見つかったらそこには天の川が必ずあります。明かりを避けてぼんやり見ていると必ず見えてきますよ!」と言った。目が慣れてくれば天の川を見ることができるなんて、これは加計呂麻島だからこそ。都会ではまず無理だ。
都会の古仁屋、街灯の明かりが目に入ってきてもさそり座を見つけることはできる。
そしてさそり座が見えるということは、そこには天の川があるはずなのだ。
加計呂麻島ならいざ知らず、古仁屋では見えない、と諦めていたのだが、昨年のイベント時に発した自分の言葉を思い出し、街灯が目に入らないように手で目を覆ってじっと待った。
しばらくして目を開ける。そこには美しい天の川が広がっていた。
思い込みは自分の大切な感覚を奪っていた。
見えないものだと決めつけていた天の川は、都会の古仁屋からも見える。
灯台と天の川
〜 古仁屋・瀬戸崎灯台
灯台のみでトイレはない。必要であれば車で数分のところにコンビニがある。
撮影日時:2017年4月14日4時37分
古仁屋中心地から数分のところに、大島海峡を航行する船舶のための灯台がある。
風が通る静かなところなのでランチタイムになると車がやってくる。車中で弁当。ぼくもそのひとり。
海面を覗くと、古仁屋港のすぐそばなのに驚くほどのコーラルブルー。ここは水中観光船せとの遊覧コースにもなっている。
灯台と夏の天の川。見頃は4月中旬の薄明始まりから8月下旬の薄明終わりまで。
1月下旬だと灯台越しにオリオン座が見える。
23時くらいにカノープスがほぼ真南に高く昇り見やすくなるので、幸運をつかみに行ってみてはいかが?
奄美の朝のトワイライトと天の川
〜 マネン崎展望広場
嘉鉄ブルーと大島海峡越しに加計呂麻島を臨める展望広場。駐車場はあるがトイレはない。
撮影日時:2018年2月18日5時58分
「朝焼けと天の川」これを見れるのはわずか数分だけ。一年でこのときだけ。2月下旬に条件がよければ遭遇する場面。
みなさんが眼を覚ます前に、空では実はこんなことがおきている。
写真は朝と天の川がすれ違う瞬間をとらえたもの。
明け方近くに、夏の天の川が昇ってくる。
天文薄明(05:40)を過ぎるとじわりじわりと明るくなっていく。日の出まであと1時間。
トワイライトでオレンジ色に染まり出すと、天の川が押し出されるように薄くなっていく。そしてまもなく天の川の姿は消えてしまう。
神々が宿る三連立神(さんれんたちがみ)
〜 西古見(にしこみ)・ナハンマ公園
西古見にはたいへんよく整備された公園および展望所が3ヶ所ある。
不思議なことにほとんどの観光ガイドブックに記載されていない、知る人ぞ知る隠れた絶景ポイントだ。
名瀬からは約2時間。古仁屋からは約1時間かかる。
駐車場あり。トイレあり。
撮影日時:2018年2月17日22時30分
三連立神の上空に冬の大三角(オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス)。天の川もはっきりと。そして三連立神の左上に見えるのがカノープス 。カノープス はシリウスに次ぐ2番目に明るい1等星。なかなかお目にかかれないカノープスが奄美ではこんなにはっきりと見える。奄美では極々普通に見えるのですが関東ではなかなかお目にかかれないとても幸運な星。この季節に奄美を訪れる方は幸運だろう。
宇宙とつながる場所を大切にしたい。
〜 西古見観測所跡公園
ナハンマ公園から登っていくこと数分。言うまでもない、絶景に出会える。
駐車場あり。トイレなし。
※2019年1月12日現在、観測所跡公園に行く道は昨年の台風24号の猛威を受け不通となっており復旧工事中。3月16日以降の開通が待ち遠しい。
撮影日時:2018年2月15日05時42分
2月下旬になると夜明け前には、冬の星座が沈み、代わって夏の天の川が姿を現わす。
この時期は日没後に冬の星座、夜明け前に夏の星座が見られるというとてもお得な季節。ただし天候が良ければの話。
左に西古見集落の明かり。中央に古仁屋の街明かり。右には、加計呂麻島の実久(さねく)の明かり。
絶景というと誰も住んでいない場所だったりするがここは違う。
絶景を壊さない、程よい明かりがここにはある。
夏まで待てない人は早起きをすると見られる。西古見観測所跡公園へどうだろう?
シーズン到来・冬のダイアモンド
撮影日時:2018年12月6日22時35分 嘉鉄ビーチ
2月下旬ともなると「冬のダイアモンド」は、20時ごろにはほぼ頭上に見られる。普段だとこの光景を見るには海の中に入らなければならない。
この日は大潮。
干潮に向かっているので浜を降りて行けるところまで行って、嘉鉄集落の東側から昇ってくる冬のダイアモンドを撮った。
これも自然の恵み。奄美大島の粋な計らいに頭が下がる。
大潮の時の干潮は集落の頭上に輝く星々を見るチャンス。
浜を降りて行き、後ろを振り返った時に飛び込んでくる星空はきっと忘れない光景になるだろう。
【星空用語解説】
★冬のダイアモンド
6つの1等星、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のリゲル、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックス、こいぬ座のプロキオンを結んでできる6角形を「冬のダイアモンド」という。
荒木マサヒロ
奄美の自然をこよなく愛すデジタルコンテンツクリエイター。天の川ハンターの異名を持ち奄美の天の川を撮り続けている。作品に iBooks「天の川見に行こっと!」シリーズがある。また自ら癒されながら収録している奄美の波音や鳥のさえずりのヒーリングネイチャーサウンドアルバムはハイレゾワールドチャートに登場している。「天の川・トークイベント」「星空撮影ワークショップ」も不定期に実施中。
Facebook 「天の川見に行こっと!奄美・瀬戸内」https://www.facebook.com/nonicotto/
この記事を書いたフォトライター
しーまブログ編集部
2010年に誕生した、シマを愛するすべての人々のための奄美群島地域情報サイト。日々あがってくるシマッチュたちのブログを主軸に、編集部が取材したグルメ・不動産・仕事・イベントなどの情報まとめなどを掲載。フリーペーパー「みしょらんガイド」「amammy」も配布中!しーまブログ