奄美大島でしか見られないって本当?!リュウキュウアユの生態に迫る
島コト
2019/03/25
田中 良洋
奄美大島には、奄美大島にしかいない生き物がたくさんいます。アマミノクロウサギ、ルリカケス、オットンガエルなど。このような奄美大島の固有種を探すのも、島に観光に来る楽しみの一つです。
今回は、その中でも川で見れる固有種、リュウキュウアユをご紹介します。その名が示すように、かつては沖縄でも生息していたリュウキュウアユですが、現在は奄美大島でしか生息していません。
リュウキュウアユとはどんな魚なのか、本土のアユとどこが違うのか、その独自の生態をご説明します。
リュウキュウアユの特徴
奄美市住用町は、奄美大島の中でも特に自然豊かな場所です。海だけではなく、川や山、マングローブ原生林があるので奄美大島の固有種を確認しやすい地域です。
川内川、住用川、役勝川と大きな川が3つもあり、どの川でもリュウキュウアユの姿が確認されています。
リュウキュウアユのことを知るために、奄美市住用町にあるマングローブパークにやってきました。ここには、奄美大島の自然を説明した展示があります。
リュウキュウアユとは、奄美大島ではヤジと呼ばれています。
絶滅危惧Ⅰ種に指定されており、沖縄でも確認されていましたが、1978年に確認されたのが最後で絶滅してしまいました。そのため現在は奄美大島にしか生息していません。
現在沖縄で見られる個体は、奄美大島の個体を放流したものです。
リュウキュウアユは、本土のアユとは遺伝的に全く異なり、100万年以上も独自の進化を遂げてきたことが分かっています。ヒレの数やウロコの形や数も違い、体も本土のアユよりも小さく、成長しても15cmを超えない個体がほとんどです。
リュウキュウアユの生活史
春、リュウキュウアユは河川を遡上します。アユは水温が低い場所を好むので、冬の時期は河口近くの海で過ごしますが、海の温度が上がる3月ごろから川を上がり、水温が低い場所へ移ります。
本土のアユは、秋に産まれ、幼魚のときには海でプランクトンを食べて成長します。冬を越し、春から初夏にかけて川を上りますが、リュウキュウアユはもっと早い段階で川を遡上するのです。
夏は成長期です。本土のアユと同じようにナワバリを持つようになり、他の個体がナワバリに近づくと撃退します。
アユは、川底に生えている付着草類を食べます。しかし、近年外来種も増え、アユが本来食べるはずの草が減ってしまっています。そのため、調べたところデトリタスと呼ばれる生物の死骸やフンを食べて生きているようです。
秋は産卵期です。海水の影響を受けない浅瀬に移動し、オスは群れになってメスが来るのを待ちます。産卵は夕方から行われ、1mmくらいの大きさの卵が川底の小石に産み付けられます。他のオスに食べられてしまうこともあります。
だいたい12月に孵化し、稚魚は海水と真水が混じった汽水域で過ごし、カイアシ類という動物プランクトンを食べながら大きくなります。
奄美大島の川を覗いてみよう
今は奄美大島にしか生息していないリュウキュウアユですが、年によって増減が大きく変わります。個体数は気温に左右され、だいたい20年周期で増えたり減ったりを繰り返しているようです。
絶滅危惧種であるリュウキュウアユを守るために、様々な取り組みが行われています。具体的には、産卵場となる河口干潟域を守ったり、リュウキュウアユの餌となる付着草類を食べてしまう外来種を減らしたりしています。
小学校でも、リュウキュウアユの生態を研究する取り組みがあり、島のみんなでリュウキュウアユを守ろうとしています。
奄美大島に観光に来る人の多くは、海を目的に来ています。しかし、少し寄り道をして川を覗いてみてください。奄美大島の川は、どこも川底がはっきり見えるほど透き通っています。夏でも冷んやりしているので、足をつけるだけでも気持ちがいいです。
川には多くの生き物が住んでいます。もしかしたらリュウキュウアユの姿が見えるかもしれませんので、探してみてくださいね!
※リュウキュウアユの捕獲は条例により禁止されています。見つけても捕まえず、そっと見守ってあげてください。
この記事を書いたフォトライター
田中 良洋
映像エディター/予備校スタッフ 兵庫県出身。奄美群島の文化に魅かれ、2017年1 月に奄美大島に移住。島暮らしや島の文化を伝えるために自身のメディア、離島ぐらし(https://rito-life.com/)を運営する。