親子漁師と漕ぎ出す奄美の海【名音の海を知り尽くした勝山親子の仁太丸ツアー】
島遊
2016/10/23
小海ももこ
奄美大島の西海岸に面した大和村は、風光明媚で、豊かな水産資源で釣り人にも人気のエリアだ。大和村の名音(なおん)は、急勾配の山を背負い、東シナ海に開かれている集落。ここに親子で漁業を営む「勝山水産」がある。大和村の海を楽しめるとびきりの海中ツアーを行っていると聞いて、さっそく体験してきた。
漁師さんが手ほどきしてくれる海中ツアー
勝山水産の船は『仁太丸』という。お父さんの浩仁さんと、20代の仁太(じんだい)君と瑚太(ごだい)君の3人で漁業、遊漁、魚屋を営んでいる。

モコモコした山に囲まれた名音港と、3人の船「仁太丸」
私は、奄美群島の体験型観光を楽しめる「奄美シマ博覧会2016」(奄美群島観光物産協会主催)で彼らが開催していた“追い込み漁とシュノーケルツアー”を申し込んでいた。
さっそく漁の説明を受け、船に乗り込み出発。海はコバルトブルーに輝き、船の上からでも海底の珊瑚が見えるほどの透明度。

5メートルくらい先の珊瑚が見えるほどきれいな海。
このツアーでは、追い込み漁を体験したり、数十メートル潜っていく彼らを見たり、暗い海中洞窟に入ったりした。彼らは海を知り尽くしているから、連れて行ってくれる場所は美しく、間違いなく“獲物”がいる。

追い込み漁は、数人で連携して、網に向かって魚を追い込む。そんな深いところではないので怖くないし、魚が網にかかるところまでしっかり見えた。
深いところでは「見ているから大丈夫よ。」と、ベテランのお父さんが声をかけてくれる。
名音の海を満喫できる最高のツアーだった。

船でしか行けない洞窟へ。海中が光を通して”青の洞窟”のようになっている。
未来を担う奄美の若い漁師たち
仁太君と瑚太君は、宿題を船の上でするほど、小さな頃から海で遊び、魚釣りに親しんできた。

島でも数少ない若い漁師さん。左が仁太君、右が瑚太君。
彼らはスルスルと海底に潜っていく。息を止めている長さにも驚く。狙いを定めて、水中銃を撃つ! そして大物を捕らえる。それを見るだけで、とてもエキサイティングだ。

自慢の獲物を捕った時の写真① 彼らのSNSにはいつも驚くほど大きな魚が登場して、どんな格闘の末に釣り上げたのだろうと想像してしまう。

自慢の獲物を捕った時の写真②
仁太君に、なんで漁師さんになったのか聞くと
「たぶん、生まれた頃から海が好きだったから漁師になっただけですよ。あと、魚も好きです。
漁師としては誰にも負けたくないので、海を守りながら毎日大漁したいです。死ぬまで漁師!が目標です。」
と答えてくれた。

水中銃を持って海に入る時。漁師さんって本当にかっこいい!
確かに名音の海は良かった。今でも、船の上で見た夕陽は忘れられない。波に揺られながら、水平線に沈む太陽は、とても神々しかった。

船の上から見る夕陽は最高だ。
実は一番の楽しみ、泳いだ後の大漁祭り
楽しみは海の中だけではない。
陸に上がったら、清らかな名音川で水浴びをした後、捕ったばかりの魚や貝を食べることができるのだ。しかもビール付きで!

この日は親戚の帰省もあり、4種類の貝と、てんこ盛りのお刺身と、バーベキューと焼き鳥という特に豪華な内容だった。
タイミングよく親戚や友達の帰省と重なったのでご一緒させてもらった。漁師さんの家族や近所の人と一緒に飲んだり食べたりできるもの、よそから来たものにとっては嬉しい体験だ。
「ツアーは正直、赤字だけどな。まあ趣味みたいなものだから」
とお父さんの浩仁さんが笑っていた。
この記事を書いたフォトライター

小海ももこ
新潟県十日町市生まれ。地方紙記者、農業、バックパッカーなどを経て、旅行雑誌や旅ガイドシリーズの編集に携わる。同時に、野外フェスの企画運営や、NPO法人で海外教育支援、震災復興支援を行う。2016年4月から奄美大島に移住。大和村地域おこし協力隊に就任。