すべてをリセットするために訪れる。奄美大島南部のリゾートホテル「THE SCENE」
島宿
2016/03/08
三谷晶子
奄美大島南部の町、古仁屋から車で約30分ほどのヤドリ浜に2015年秋にオープンしたTHE SCENEは、奄美大島の「何もなさ」を味わうためのホテルです。
曲がりくねった山道を進み、さりげない看板を目印に道を曲がると見えるのは、「自然の神が宿る」と言われる加計呂麻島と静かに、そして豊かに広がる大島海峡。ビーチには、少々のデッキチェアとテーブルがあるのみ。
お部屋は全室オーシャンビュー。目の前の景色の美しさを邪魔しない、シンプルな白と青でまとめられています。
ただ、今ここにあるものに気づき、自分に立ち返る。
日々の忙しさでふと見失いがちな、そんなシンプルなことにそっと気づけるような時間が過ごせる場所です。
チェックインしたら、まずはゆっくり夕陽を眺めて。部屋の中からでもこの景色!
レストランスペースももちろんオーシャンビュー。サンセットを眺めながらのディナーも可能。
夕食は、イタリアンと和食の2種類。
和食はさっぱり食べ疲れしない味にアレンジした、奄美大島の郷土料理である鶏出汁で食べるお茶漬け「鶏飯」がメイン。監修は東京西麻布の「すし通」大将、藤永大介氏が担当。奄美の人の純粋な人柄に打たれた藤永氏は、奄美人限定で弟子を募集するほど、島に惚れ込んでいます。
イタリアンは代官山「カノビアーノ」の総料理長、植竹降政氏が監修を担当。いわゆるイタリアンのディナーはこってりとしたゴージャスな食事をイメージしますが、化学調味料を一切使わず、塩とオリーブオイルをメインで仕上げたコースは、最後まで、食べ疲れせずにいただけるおいしさです。
名物のフルーツトマトと薩摩甘エビのカッペリーニはカラスミが味のポイント。食べたことのない新しい味です。
水牛のモッツアレラとフルーツトマトのサラダ仕立て、カンパーニャ産生ハム添えは濃厚なモッツアレラと野菜の豊かな味わいが楽しめます。
ホタテのポワレ ソラマメと白菜のスープ仕立て 菜の花のソテー添え。彩りも美しい春らしいお味でした。
個人的に、特におすすめは、奄美産のヤギとキノコのスパゲティーニ(季節によりメニューは変動)。
ヤギ肉はクセが強く食べにくいというイメージがありますが、こちらのパスタは、ヤギ独特の風味がシンプルなオイルソースの味付けのパスタに、チーズのような風味を加えていて、「ヤギ肉がこんな風に美味しくなるんだ!」と驚きました。
食材はもちろん、奄美・鹿児島産を中心としたもの。お酒も国内で奄美群島でしか作ることができない黒糖焼酎をメインに取り揃えています。
また、ディナーはレストランスペースはもちろん、屋上やビーチ、室内、どこでも自由に楽しめるスタイル。
食事のあとでお酒を楽しみたいとき、24時間対応のコンシェルジュが
・屋上で星を眺めながら
・ビーチで海の音を聞きながら
・室内から目の前に望む海と加計呂麻島を眺めながら
など、あなたの思う通りのくつろぎ方に応えてくれます。
屋上から眺める月。ロマンティックの一言につきます。
到着時のウェルカムドリンクや、朝食をビーチでいただくことも可能。
室料にはビーチ(雨天の場合はエントランス)で行われるサンセットヨガ、サンライズヨガもセット。
美しい海を眺め、奄美の食材を生かした食事で体の中がリセットされたら、最高のロケーションで行われるビーチヨガで、自然と体と心が一体であることを感じましょう。
奄美大島のかけがえのなさは、「本来に戻れる」時間を持つことができる、という点だと私は思います。
その、何もなく、けれども、かけがえのない状態になるお手伝いをしてくれるようなホテルです。
ランチやディナー(要予約)、毎週火曜日と土曜日に行われるヨガイベント(要予約)のみでの利用も、もちろん大歓迎。観光客にも、地元の人にも末永く愛されるホテルを目指しているそう。
取材当日は残念ながら雨だったのですが、翌朝に雨が上がり、そして虹が。スタッフの方に「夢みたいな景色ですね」と言うと、「みんなの夢を叶えてくれる場所だと思います」と答えてくださいました。
ホテル目の前にあるハート型のプールに差す、雨上がりの神々しい光。
何もない状態に立ち返り、そして、本来の自分を取り戻して笑顔になる。
THE SCENEに訪れることで、大切なものをもう一度見つめ直してみては?
この記事を書いたフォトライター
三谷晶子
作家、ILAND identityプロデューサー。著作に『ろくでなし6TEEN』(小学館)、『腹黒い11人の女』(yours-store)。短編小説『こうげ帖』、『海の上に浮かぶ森のような島は』。2013年、奄美諸島加計呂麻島に移住。小説・コラムの執筆活動をしつつ、2015年加計呂麻島をテーマとしたアパレルブランド、ILAND identityを開始。