360°広がる大パノラマ。加計呂麻島「ガンバロウ丘」で眺めるサンセットとソテツの物語
島景
2017/05/15
三谷晶子
奄美大島の南部、古仁屋港より船で約20分の加計呂麻島・秋徳集落にある「ガンバロウ丘」。佐知克集落と秋徳集落の間の林道を走ると見えてくるその丘は、美しい夕陽とともに、数々の人の思いが息づく場所です。
もともとは秋徳集落に住む徳田達郎さんの祖父が営むソテツ農園だったこの場所。ソテツの実は奄美大島では「ナリ」と呼ばれ、戦時中から戦後、島の人々が飢えに苦しんだ時にはその実を食べ、飢えをしのいできました。
ソテツの実は毒性があり、手間のかかる毒抜きをしないと本来は食べられないものですが、それすらも食べなければならないほど当時の人々は飢えていたのです。また、ソテツは台風や潮害、日照りにも強く、土砂崩れの防止や防風林としても、島の暮らしに役立ってきました。いわば、ソテツは、島の人々の危機を救い、今も島の暮らしを守る大事な植物なのです。
島を救ったソテツを模した「南国のヒーロー ソテツマン」というキャラクターも発売しています。
ところが、ソテツはとても成長の遅い植物。
一年間で2~4センチほどしか成長せず、1メートル育つのに40年以上の時がかかります。
昔と比べてソテツが失われつつある現在。そこで、加計呂麻島にソテツを復活させようとしているのがこのガンバロウ丘を所有する徳田達郎さんです。
もともとは祖父の代から受け継ぐソテツ農園を復活させようと、ソテツやつつじの植樹を進め、道やベンチを自前で整備。
今では、東の水平線から朝日、西の水平線から夕陽が眺められるパノラマスポットになりました。
夕陽の見ごろは6月から9月。
このガンバロウ丘という名前の由来は、徳田さんが、ここで夕陽を眺めるとどんなにつらいことがあっても頑張ろうと思えたからだとか。
生い茂るソテツとつつじが咲き乱れるガンバロウ丘に、ぜひ一度足を運んでみては。
この記事を書いたフォトライター
三谷晶子
作家、ILAND identityプロデューサー。著作に『ろくでなし6TEEN』(小学館)、『腹黒い11人の女』(yours-store)。短編小説『こうげ帖』、『海の上に浮かぶ森のような島は』。2013年、奄美諸島加計呂麻島に移住。小説・コラムの執筆活動をしつつ、2015年加計呂麻島をテーマとしたアパレルブランド、ILAND identityを開始。