【八月踊り体験記】月夜のもと唄い踊る、奄美文化を体験!大和村大棚集落

島唄

2017/08/03

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麓 卑弥呼

奄美の人々は芸達者だ。

歌に踊りに余興にと、人々が集まる宴会の場には、たいていにぎやかな音が生まれはじめる。

集まった人々が奏でる唄や踊り、拍手にハト(指笛)。和やかな雰囲気のなかににぎやかさが加わり、歌や踊りは集まった人たちの気持ちを「共有」させる、有効なツールなのだと感じる。

そんな奄美の芸能文化の巨頭ともいうべきが、「八月踊り」。

奄美大島八月踊りに集まる人

各集落ごとで異なる歌詞・踊りが幾種類も存在する、集落の絆の象徴

集落に所属していないとなかなか参加する機会は少ないのだが、今回、一般社団法人奄美群島観光物産協会が主催する体験観光プログラム「あまみシマ博覧会」のなかで、「奄美の伝統八月踊り体験ツアー」が開催されている。

実際に体験し、なんとも豊かなひとときを堪能してきた。

8月中にあと2回、9月に2回開催されるので、興味がある方はぜひご参加を。詳しくはこちらから!

 

海沿いの集落に響く音楽に誘われて、公民館に集合

集合は大棚集落公民館。日暮れが始まったぐらいに車を大和村へ走らせた。

次第に夕暮れていく空を横目に海岸線沿いの山道をひた走る。東シナ海沿いに伸びるこの村から見る夕日は、本当に美しい。

大和村夕日

刻一刻と変わる夕日を眺めながらのご機嫌ドライブ。

大棚集落に到着すると、チヂン(太鼓)の音が聞こえてくるので、地図を見なくてもすぐに公民館の場所がわかる。

大棚公民館の八月踊りに集まる人

奄美の集落にはだいたい「公民館」や「生活館」といった集会場があって、そこには土俵がある。

ここが踊りの舞台。あたたかな光のもと、集落のオジやオバがすでに集合して、くつろいだ雰囲気だ。

 

伝統を受け継ぐため、保存会を立ち上げ

早速、今回のプログラム案内人の前田清和さんに話を聞いた。

「伝統を受け継ぐ40-50代が唄を覚えていないのを問題に思い、平成20年に大棚集落八月踊り保存会を立ち上げました。集落の人全員が会員。いまではみな唄えるようになり、シバサシやアラセツ、送り盆などさまざまな場面で八月踊りを踊っています」

昔と今とではシマッチュの生活スタイルも変わっている。自然と身についた昔とは違い、積極的に学ぶ場を作らなくては保存継承は難しいのだ。シマ博への参加については、

「村の呼びかけもあり、集落全員でできるプログラムがないかと思い、今回初めてシマ博にエントリーしました。一曲ずつ踊って、飲食も楽しんで。お年寄りに話しなんかも聞いて。一人でも二人でも、参加された方が楽しんでもらえたら」

と前田さん。

希望通り、全5回開催の初回となる今回は、東京の女子大生の参加も。そんなお話を聞いていると、いよいよスタートの時間がやってきた。

 

シマッチュの円陣に加わる

「じゃあ、はじめましょうか」の掛け声で、自然に土俵のまわりに輪ができるので、ささっと自分も加わる。

チヂンの音と唄。すぐに振りが始まる。

男性と女性との歌詞は掛け合いになっていて、交互に歌うのがセオリー。

奄美大島の八月踊りを踊る人々

手は顔の横あたりでゆるやかに空気をつかみように福を招き、波を表現するかのように下で左右へ流す。

一連の動作は非常に優雅。特に上級者(お年寄り)になると動きに無駄や迷いがなく、流れるようで見ほれる。

初心者はとにかく対面のベテラン陣の踊りを凝視しながら、なるべく優雅に舞えるように必死にまねをする。

奄美大島の八月踊りを踊る人々

集落の子供たちも一人前の踊り手で、ハト(指笛)がとても上手だった!

奄美大島の八月踊りを踊る人々

シマッチュはみなかっこいいのだが、特にベテラン陣はしゃきっと力強く、勇姿がまぶしい。

奄美大島の八月踊りを踊る人々

 

スイッチオン!「あらしゃげる」とは?

踊りは基本的に同じ振りの繰り返し。慣れてくれば自然と身体も動いてくるのでほっとしていたが、問題はここから。

徐々に徐々に、速度が速まっていくのだ。

奄美大島の八月踊りを踊る人々

この速さの切り替えを「あらしゃげ」と言うのだとか。

せっかく覚えた振りは、あらしゃげが始まると速度とともに微妙にショートカットされながらスピードを増していく。

早い・・・!!!

初心者のなかには脱落者も出てきて(いったんわからなくなるとついていけなくなる)、踊りとも言えないバタバタ感で笑いもこみ上げてくる。

同じ動作を繰り返し、それが速度を増して、もう無理!と思うと同時に終了。

それはひとつのうねりがはじけるように、まるで昇華するように。

終わればみな表情を緩めて笑顔。不思議な達成感と安堵感。次の曲に行く前に休憩が挟まれる。

 

なごやかな休憩タイム

八月踊りの手作りお菓子

心配りのお菓子がずらり。

好きなものを好きなだけどうぞのスタイル。

八月踊りビール

ありがたくビールもいただく。もちろん黒糖焼酎もたくさん用意されている。

八月踊りの子供たち

大人にまじって子供たちも参加。

踊りの輪や休憩タイムで自然といろいろなことを学ぶのでしょうね。

チヂンをたたく叩くオバ

休憩タイムなのに、芸達者なオバがチヂンを鳴らすと、脇で即興の踊りも飛び出して大盛り上がり。

このひとときも、イベントの大切な要素のひとつなのだと思う。

 

貴重なアイテムいただきました

大棚八月踊りの歌詞集とCD

八月踊り参加記念として、歌詞集とCDをいただいた。手作りの貴重な品に感激・・・!

 

約2時間の八月踊り。途中にはゲスト参加者の自己紹介タイムもはさまれ、集落の方々にごあいさつ。

短い時間だったけど、たくさん声をかけていただいて、一体感も味わえた貴重なひとときとなった。

 

島に来てよく思うことは、いろいろなものを知るにはまず飛び込んでみること。

今回もしかり。

奄美には素晴らしい海や山の自然がある。はじめて訪れる人は、やはりまずそこを堪能して欲しいと思う。

そして、次にもっと奄美を知りたい、と思ってもらえるのだとしたら、この独特の文化に触れて欲しい。

島唄や八月踊り、六調。特に「個」ではなく大人数で行う八月踊りなどは、シマッチュ同士の濃い結びつきと助け合う精神を養う場でもあり、神への祈りでもある。これこそが奄美の文化の真髄なのではないかと感じる。

機会があればぜひ飛び込んでみて欲しい。見て聞くだけではない感覚を、きっと味わうことができる。

奄美大島の八月踊りをする人々

 

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この記事を書いたフォトライター

麓 卑弥呼

麓 卑弥呼

ライター/しーまブログ編集長。東京都出身。大学時代に訪れた与論島にはじまり、縁あって奄美大島の新聞社に新卒で就職。さらに縁あって島人と結婚し、自らが島人となり奄美に完全に根を下ろす。フリーライターなどを経て2014年にしーまブログに入社し、現在に至る。

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