奄美市名瀬街を一望できるサンセットビューポイント「大熊展望台」
島景
2016/08/22
麓 卑弥呼
行くたびに、あぁ、ここで毎日夕陽を見れたら最高だろうなあ、と思う場所がある。
奄美市名瀬大熊。中心市街地から程近く、天気がよければ思いつきで家や会社から車を走らせればなんとか夕陽に間に合う場所にある。
大熊集落の漁港から見る夕陽はとにかく素晴らしい。海が空が、夕陽色に染められていく。
しかし夕陽をもう少し長く、完全な形で眺めたいときにはもっと絶好の場所がある。山の中腹にある大熊展望台だ。
大きなガジュマルがシンボル
大熊集落の突き当たりから有良・芦花部集落へ向かう峠を登ってしばらく行けば、左手に展望台が登場する。
昔(私が島に移住してきた15年ほど前)は、ここは今ほどきれいに整備はされておらず、ガジュマルが展望台になっていたと記憶している。大きなガジュマルに板が組まれている形で、絶好の眺めと素朴な展望台はちょっとした休憩スポットだったように思う。
今は展望台のシンボル的にガジュマルは佇んでいる。周囲にはベンチなども設置されている。
名瀬街、立神と湾と外海との接点が一望でき、しばらく眺めていると、船の出入りも確認することができて、なかなか楽しい。
今日は何色だろう
撮影のため幾度も通ったが、都度、出会う夕陽の色は違い、雲の形ももちろん異なり、一期一会のような写真を何枚も撮ることができた。
この日は鳥の神様のような雲の形が印象的だった。
たなびく雲が作る陰影は黄金色。
空気までも夕陽が赤く染めているような空。
ピンクと青を感じた、不思議な空の色。
今日出会う色はどんな色だろう。
夕陽=赤、という単純な発想は一掃された。
ただ、日暮れを待つ時間
そしてここを訪れるたび、数名の見物客が必ずといっていいほどいた。
彼らはただ静かにゆっくりと、夕暮れていくのを待っているだけ。時折、出会った人同士で会話を交わすこともある。
「どうですかね、今日は」
「今日はいいと思いますよ。すごい夕焼けになるんじゃないかなあ」
そしてみんなで「すごい夕焼け」を待つ。なんとも平和で贅沢なひととき。
山積みの仕事をなんとか片付け、夕ご飯の支度を控えた忙しないこの時間。心は急いでいたのに、集まった人たちとただ、ゆっくりと夕陽を待つひとときは本当に久しぶりに、心が静かに落ち着いた。
忙しいときこそのひととき。またひとつ、島で過ごす時間の豊かさを知った。
この記事を書いたフォトライター
麓 卑弥呼
ライター/しーまブログ編集長。東京都出身。大学時代に訪れた与論島にはじまり、縁あって奄美大島の新聞社に新卒で就職。さらに縁あって島人と結婚し、自らが島人となり奄美に完全に根を下ろす。フリーライターなどを経て2014年にしーまブログに入社し、現在に至る。