特別な奄美のシマ時間を感じる。龍郷町安木屋場の海岸線を夕暮れ散歩。
島景
2016/08/24
トヨヤマ コトネ
奄美の夏の夕暮れに海沿いで散歩をするのが好き。昼の強い陽も落ち着いて、暑くもなく寒くもない。
身体をすり抜ける南国の風が心地よく、綺麗な夕日を見ながら、1日の終わりに散歩をする時間はまさに至福の時。島に住んでてよかったな、と思える特別な時間。
私の夕暮れ散歩でお気に入りの場所は龍郷町にある安木屋場集落。集落の入り口に「夕陽のふるさと」と書かれた木の柱がある。
東シナ海が広がる海岸線は夕日を眺めるには絶好の場所。
散歩の前にアイスが食べたいなと思い、お店を探した。
安木屋場集落内に唯一あるお店「阿世知商店」。こぢんまりとした店内の中には必要最低限の生活物資。
そして冷蔵庫の中になにやらなつかしいものが。
シマッチュだったら子供の頃一度は食べたことのある「いけざきのアイスキャンディー」。
私も幼い頃、両親と島に帰省した時に食べた。ここに来るまで思い出せなかった。
斜めに入った木の棒がなんともいえない愛らしさ。あまったるいイチゴの味。
懐かしい思い出とともにアイスを頬張りながら散歩をする。
歩いていると、坂の上にたたずむ石碑を見つけた。
「島唄の先人 阿世知牧直之碑」だ。ちょうど「夕陽のふるさと」と書かれた木の柱の後ろにある。
阿世知牧直は薩摩藩時代の後期、民衆詩人として親しまれた人物。即興で歌う、とても優れた唄者だったそう。
安木屋場の墓地の片隅に小さなお墓があり、そこに腰かけ三味線やシマ唄の稽古をすると上達が早いといわれていた。今でも1人前になりたい人は阿世知牧直の墓参りを続けているそう。
そんな阿世知牧直の碑の周りにはベンチが置かれ、小さな公園のようになっている。ここに腰かけシマ唄の碑を読みながら安木屋場の歴史に思いを馳せるのもまたいい。
海岸に降りてくると、立神の向こうに二つの虹が。夕陽に照らされてとても綺麗だった。スコールの多い島ならではの景色。雨のあとにとても幻想的な風景を見せてくれた。
県道81号線の歩道を歩く。アイスを食べて冷えた体に生暖かい風が心地よい。この道をずっと歩きたい、そう思えるような夕陽と水平線を見つめながら、夕暮れ散歩を楽しんだ。
この記事を書いたフォトライター
トヨヤマ コトネ
フォトグラファー/しーま編集部。 奄美2世。大阪のフォトスタジオで勤務後、 幼少期から何度も訪れていた思いいれのあるシマに2014年移住。写真や言葉にするのが難しい奄美の美しさをどう表現するか日々模索中。