色鮮やかな伝統行事~五穀豊穣を願う、加計呂麻島西阿室集落の「テンテン踊り」
島唄
2016/11/10
三谷晶子
旧暦の8月15日前後になると、奄美の各地で行われる豊年祭。加計呂麻島の西阿室集落の豊年祭は、華やかな花飾りをもって踊る、「テンテン踊り」でよく知られています。
この旧暦の8月15日は、昔の島では稲などの収穫を終えてほっと一息する時期。娯楽の少ない昔の島では、八月踊りや祭りを通じて共に余興を楽しみ、お酒を酌み交わし、互いの一年の労をねぎらう、心浮き立つ時期だったのだとか。
今年の収穫に感謝し、来年の五穀豊穣を皆で祈り、そして、互いの無病息災を確かめ喜び合う。
島での暮らしになくてはならない、一大イベントだったのです。
男性陣による相撲、女性陣による踊りや歌などの余興、伝統芸能が披露されるのが一般的な形。現在では、島を代々守ってきたお年寄りをお祝いする、敬老会も兼ねるところが多く、お年寄りには一番よい席が用意されています。
また、その集落出身の人々がこぞってこの時期に戻ってくるのも豊年祭の特徴。住民はもちろん、全国各地からのゆかりの人々が協力しあって作られるのが豊年祭なのです。
集落の中心地にある広場は「ミャー」と呼ばれ、加計呂麻島の各集落にあるもの。古くから祭祀が行われている場所で、ミャーの近辺には大抵土俵があり、現在は集落の公民館も隣接されているところが多く見られます。豊年祭は、そのミャーで行われます。
昼12時から13時頃に始まり、まずは集落のまとめ役である区長の挨拶からスタート。続いて、「振り出し」と呼ばれるちぢん太鼓とほら貝の音色に合わせて、まわし姿の男性陣が土俵の周囲を練り歩くものがあります。
そして、続いては西阿室の伝統的な踊りである「テンテン踊り」。
見所は、西阿室集落の中心部を流れる川を隔てた、里と金久という地区に分かれて競い合う、両集落の踊りの華やかさ。
「里」「金久」と地区名が書かれたプラカードに続いて、大きな花飾りを持った男性陣が入場。花飾りを左右に揺らしながら、土俵の周囲を練り歩きます。女性たちは手踊りを見せながら、あとに続きます。
この花飾りは当日まで相手の集落に知られないように作ったそう。昔は仮装や御神輿もあり、さらに華やかだったのだとか。
西阿室集落は加計呂麻島の中でも伝統行事が色濃く残り、豊年祭にかける意気込みが熱いことで知られているところ。
観客のために作る席も現在はほとんどがテントですが、西阿室集落ではシバヤと呼ばれる木の枝と葉で作られるものを毎回作っています。
歴史を経てなお残り、今も人々を楽しませる伝統行事「テンテン踊り」。
次の旧暦8月15日に、ぜひ見に行ってみてはいかがでしょうか?
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鹿児島県大島郡瀬戸内町西阿室
写真協力╱瀬戸内町地域おこし協力隊 長紘子
この記事を書いたフォトライター
三谷晶子
作家、ILAND identityプロデューサー。著作に『ろくでなし6TEEN』(小学館)、『腹黒い11人の女』(yours-store)。短編小説『こうげ帖』、『海の上に浮かぶ森のような島は』。2013年、奄美諸島加計呂麻島に移住。小説・コラムの執筆活動をしつつ、2015年加計呂麻島をテーマとしたアパレルブランド、ILAND identityを開始。