でいご並木と浜辺に降り注ぐやわらかな夕暮れの光「加計呂麻島諸鈍集落」
島景
2017/03/23
三谷晶子
堤防に腰かけ、刻一刻と変わる夕暮れの色と光を眺めていると、自転車で通ったお年寄りが引き返してきてこう言いました。
「この景色、最高だろ? 俺もここで生まれたけれど、毎日、最高だなって思うんだ」
そう言って「なんだか嬉しいから」とビールを一缶差し入れて、またでいご並木沿いの道を自転車をこいで去っていきました。
加計呂麻島の生間港から車で15分ほどの集落、諸鈍。
『男はつらいよ~寅次郎紅の花~』のロケ地としてリリーの家やでいご並木がある集落の夕暮れ。山に囲まれるように湾になっている形状から、海面に沈む夕日を見ることはできませんが、めったに荒れることのないなめらかな海に映り込む繊細な夕焼けの色は、いつまで見ていても見飽きることがありません。
台風の前は夕焼けがきれいだということがよく知られていますが、こんな風にピンクゴールドになる時も。
近くに商店と移動スーパーがあるので、夕暮れを眺めながらビールを飲むことも可能。
近辺には加計呂麻島内で一番大きな小中学校があり、こうして砂浜でハートを描く中学生や、兄弟同士で夕暮れの海で遊ぶ姿も時には見られます。
夕涼みがてら浜辺でピクニックをする人たちも。
でいご並木の近くのおうちで飼われている諸鈍のアイドル犬、コロちゃん。日差しが和らいで過ごしやすくなった夕暮れ時は犬の散歩タイム。砂浜のあちこちに、犬が駆けています。
昨年には加計呂麻島展示・体験交流館もできた諸鈍集落。国指定重要民俗無形文化財に指定された諸鈍シバヤについての展示や、加計呂麻島の名産品の販売、シュノーケルグッズの貸し出しや電動自転車のレンタルも行っているので、まずはここに立ち寄り、観光の計画を立てるとよいかも。
諸鈍に伝わるシマ唄『諸鈍長浜節』には、「諸鈍の女の子の笑顔は諸鈍の長浜のように、白く輝いている。諸鈍の女の子の心は、諸鈍長浜の浦のように深く情が深い」という意味合いの歌詞があります。
この場所に暮らす人々がそれぞれの形でいつくしんでいる、長く続く白い浜辺を染めるやわらかな夕暮れ。
でいご並木の前にある堤防に座って日が沈むまでを眺めると、きっと、毎日繰り返されている夕暮れが、かけがえのないものに感じられるでしょう。
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鹿児島県大島郡瀬戸内町諸鈍
この記事を書いたフォトライター
三谷晶子
作家、ILAND identityプロデューサー。著作に『ろくでなし6TEEN』(小学館)、『腹黒い11人の女』(yours-store)。短編小説『こうげ帖』、『海の上に浮かぶ森のような島は』。2013年、奄美諸島加計呂麻島に移住。小説・コラムの執筆活動をしつつ、2015年加計呂麻島をテーマとしたアパレルブランド、ILAND identityを開始。