ノロの祭祀道具と海底遺跡資料を展示 知られざる宇検村の観光スポット「元気のでる館」
島景
2017/04/25
麓 卑弥呼
奄美大島西南部に位置する宇検村。奄美最高峰の湯湾岳の麓に広がり、おだやかな海と海岸線上に点在する集落とで形成されている。
いつも不思議に感じるほど、ここにくるとなんだかふわーっとリラックス。ああ、いま、この瞬間、(私の)世界は平和なんだなあ。としみじしみしてしまう。そんな村だ。
そんな宇検村の中心部、湯湾集落には「元気の出る館」という施設がある。
こちらは生涯学習センターとしてホールや会議室がある村の中心スポット。しかし観光で訪れた人にはあまり関係がない、と思われがちだが・・・実はいろいろと珍しいものが置いてあって、私は結構好きで、村に来るたびに立ち寄っている。
今回はぜひ宇検村にきたら立ち寄ってほしい穴場スポットとしてご紹介します!
奄美の希少野生生物がずらりお出迎え
元気の出る館は、ホール、講座室、和室、調理室などのほか、図書室、歴史民俗資料室などで構成。玄関に入ると、すぐに出迎えてくれるのが野生生物の剥製たち。
アマミノクロウサギやアカショウビンなど珍しい動物たちがずらり。自然豊かな奄美ですが、山の中にいる野生生物を間近にすることはほとんどないのが現状。通り過ぎずにぜひ珍しい野生生物の観察をしてみよう。
あのオリンピック選手のサイン入り卓球台
ホールをのぞくと、なにやら白い書き込みがある卓球台が。よく見ると、誰かのサイン!2016年のリオオリンピックに出場した卓球の福原愛選手のサイン!!
オリンピック前に宇検村で合宿を行った際に残していったものなのだとか。かわいいメッセージ♪
※現在では宇検村立体育館倉庫に保管されています。もし見たい場合には、必ず事前に教育委員会に連絡をお願いします。
図書室の隣にあります。歴史民俗資料館
さて、一番のおすすめは、図書室に入って左側にある歴史民俗資料館。
まずは倉木崎海底遺跡。村内にある無人島「枝手久島(えだてくじま)」北側の海底で、平成6年に中国製陶磁器が多数散乱しているのが発見されたことに端を発する。
その後調査が始まり、2300点にものぼる遺物が見つかっている。ほとんどが12世紀後半から13世紀初頭の中国製のもので、「日本に向かった貿易船が何らかのトラブル で沈没した可能性が考えられる」とされている。
ここでは遺跡の概要と、海から引き揚げた青磁などの陶磁器を展示している。
あの穏やかで美しい宇検村の海で、当時何があったのだろうか。
貿易船が村に立ち寄り、奄美との交易を行っていた可能性もあるのだろうか。
当時の風景を見てみたくなるようなロマンがある話。
鮮やかなノロの祭祀儀礼グッズ
ノロとは、沖縄・琉球国の祭祀儀礼をつかさどる女性の神職。かつて琉球の支配下にあった奄美群島では、琉球王朝から任命を受けたノロが存在していた。
各地に存在し、集落や人々の安全・繁栄を祈ったノロも、時代とともに姿を消し、いまではほとんど残っていない。
宇検村のノロの間で代々受け継がれていた貴重な道具がここには集められている。
扇(テロギ)や、白衣(シルギン)などノロの行事解説とともにみることができる。
大きな任務を背負った、神高い(奄美ではこのような表現を使う)女性たちを写した姿は美しい。
鮮やかな道具の数々は、これが実際に使用されていた当時は一般の人々は目にすることもできなかったような、宝でもある。
静かな海の底に眠った海底遺跡。
役目を終えた、華やかな祭祀儀礼の道具。
長い村の歴史を刻んできた華やかな歴史や文化の一端をここで見ることができる貴重な場所だ。宇検村を訪れた際にはぜひ足を運んでみては。
この記事を書いたフォトライター
麓 卑弥呼
ライター/しーまブログ編集長。東京都出身。大学時代に訪れた与論島にはじまり、縁あって奄美大島の新聞社に新卒で就職。さらに縁あって島人と結婚し、自らが島人となり奄美に完全に根を下ろす。フリーライターなどを経て2014年にしーまブログに入社し、現在に至る。