大和村の小さなお菓子屋“やまとや”オープン
島モノ
2017/04/30
小海ももこ
地域密着型お菓子屋のモットー
奄美大島の中西部、東シナ海に面した大和村。
そこに2016年12月、小さなお菓子作りグループが誕生しました。
去年移住してきた私も、そのメンバーの一人です。
その名も「おかしのやまとや」。一見するとなにやら大きなお菓子屋さんのようですが、あくまで小さくささやかなスタートです。しかし、大切にしたい「モットー」があります。以下の通り。
- 子どもたちをはじめ大和村に住む人に健康的なお菓子を提供する
- できるだけ村内の、もしくは奄美群島内の農作物を利用する
- みんなの特技を活かす
- 物産館である大和まほろば館に地元の方が立ち寄る理由を作る
- 作って欲しい農作物を農業者に提案する
- お金が村内で回るようにする
と言っても、正直な話、お菓子を作って食べるのが好きなメンバーが、みんなにちょっとおすそ分けするような気持ちでできたグループです。
村内のイベントに参加した際、津名久集落の無農薬レモンを使ったお菓子を販売。
町が近いために村からお金が流出?!
大和村は人口1500人程度の小さな村です。
奄美最高峰の湯湾岳から、東シナ海をのぞむ海岸線まで高低の差があるため、様々な農作物が育ちます。
国直海岸の夕陽。大和村は奄美大島の西海岸にあるので夕陽が綺麗です。
しかし、飲食店の数は片手で足りる程度で、メニューの選択肢も少ないです。各集落に小さな商店がありますが、商品が限られるため、車が乗れるファミリー世代はやっぱり近隣の町で買い物を済ませてきてしまいます。
そこで「村で買えるものが一つでも増えたらいい。」という願いから、もともとお菓子作りが好きなメンバーが集い “お菓子のやまとや”が生まれました。
作戦会議は食べ物持ち寄りで子どもも一緒にワイワイと。お菓子の試食もします。
作って楽しい、食べて嬉しいお菓子の循環
「お菓子を作ってみようか」という話から、作業所での試作が始まり、各所で応援してくれる人がいて、トントン拍子に菓子製造免許の取得が決まりました。
子どもたちに食べてもらいたいので、甘さ控えめで、添加物を使わないようにしています。
メンバーがそれぞれ1〜2種類のお菓子を作ります。そして自分のお菓子を、自分がパッケージします。
みんなで一緒に一つのお菓子を作った方が楽ですが、それぞれのこだわりを大切にしたいのと、できるだけ「みんなで作らなくてはいけない」という義務感をなくすために、自分のお菓子は自分で作るようにしました。
数は少ないですが、種類が豊富になって選ぶ楽しみがあると思っています。
アマミノクロウサギを型どったクッキーもあります。耳を短くしているのがこだわり。
フランス風マシュマロのギモーヴには、いつか村内のすももや野いちごを使いたいと思っています。
さっそく、年末のクリスマスイベントや、恒例のウォーキングイベントにお誘いをいただき、出店したところ見事完売。
それを受けて、2017年2月から本格的に大和まほろば館で販売を始め、バレンタイン直前の週末は、新聞に掲載してもらったこともあり、1日目でほぼ完売。慌ててその夜に再製作をし、店頭に並べてもらいました。
すももシフォンケーキや濃厚ピーナッツクッキー、おつまみクラッカーなど全9種類のお菓子が並びました。
「美味しい」とか「くせになるっちょや〜」など嬉しいコメントをいただいています。また「お菓子のことを考えている時が楽しい。」製作メンバーからそんな声も聞こえます。
今後は、年配のご婦人方や、農業者とも繋がりを持って、コラボレーションやプロデュースもできたらいいなと考えています。
無理せず、楽しみながら、この美しい土地を活かせるようなお菓子を作っていきたいと思います。
やまとやでは、名音地区の浜で釜炊きした塩を使っています。
この記事を書いたフォトライター
小海ももこ
新潟県十日町市生まれ。地方紙記者、農業、バックパッカーなどを経て、旅行雑誌や旅ガイドシリーズの編集に携わる。同時に、野外フェスの企画運営や、NPO法人で海外教育支援、震災復興支援を行う。2016年4月から奄美大島に移住。大和村地域おこし協力隊に就任。