あなたも「ブラ奄美!」Vol.3|甘い「黒砂糖」のしょっぱい歴史
島コト
2018/03/05
勝 朝子
街歩きの達人であるタレントのタモリさんが、ブラブラ歩きながら土地の歴史や文化、人の暮らしを探るNHKの人気番組「ブラタモリ」。その「ブラタモリ」が2017年に奄美大島にやってきました。
2017年3月~4月に番組異例の3回に渡って放送された「ブラタモリ」では、地元シマッチュ(島人)も知らなかったような、奄美大島の根幹とも言えるディープな文化・歴史・自然が紹介され、多くの発見がありました。番組のナビゲーションを参考に、あまみっけ。ライターが奄美大島の地を巡り、奄美大島の自然とそれによってはぐくまれた奄美の宝について改めてご紹介していきます。
テーマごとに巡る全6回シリーズ。さあ、あなたも「ブラ奄美」してみませんか?
あなたも「ブラ奄美!」Vol.1|自然をいかした奄美の宝「大島紬」
あなたも「ブラ奄美!」Vol.2|奄美の米作りに隠された知恵を探る
あなたも「ブラ奄美!」Vol.3|甘い「黒砂糖」のしょっぱい歴史
あなたも「ブラ奄美!」Vol.4|固有種の宝庫である奄美の森を探る
あなたも「ブラ奄美!」Vol.5|海と陸のキワにある生命のゆりかご
あなたも「ブラ奄美!」Vol.6|独特な地形が生み出す自然の恵み
あなたも「ブラ奄美!」Vol.3|甘い「黒砂糖」のしょっぱい歴史
さて今回は、ブラタモリの中で奄美の宝として紹介されている黒砂糖がテーマです。黒砂糖にはどんな謎が隠されているのでしょうか?
黒糖作りを間近で見学
まずは、番組内でタモリさん御一行も訪問していた水間製糖にお邪魔します。
名瀬から車を走らせること約20分。回りを山に挟まれた龍郷町中勝。
国道58号線の左手に「水間黒糖工場」と書かれた建物が見えてきます。
サトウキビの糖度が上がる10月頃から7月頃までの営業ですので、訪問の際はご注意ください。
作業の邪魔にならないように気を付ければ、見学はどなたでもOKとのことです。
水間製糖は、昭和58年ごろに今のご主人の水間 範光(みずま のりみつ)さんのお父様 範仁(のりひと)さんが、この地で黒砂糖づくりを始められて創業されたそうです。
お店の前には、刈り取られたばかりのサトウキビが山のように積まれています。
現在は効率性のためにハーべスターという機械でサトウキビを刈ることが多いのですが、ここでは、昔ながらの手刈りにこだわっています。
手で一本一本かられたサトウキビは、ハカマと呼ばれる茎についた葉もきちんと落とされて積まれています。
機械で刈ると、このように綺麗に刈ることはできないそうです。
このサトウキビ刈りの作業は、腰をかがめ、固いキビを鎌で倒すので大変な肉体作業。
サトウキビの茎は木のように固いのです。
奄美大島ではサトウキビのことをウギ、サトウキビの収穫のことをウギハギといいます。
収穫されたサトウキビは、右奥にある絞り機で圧搾されてジュースが搾り取られます。搾りかす(バガス)は、燃料として利用します。タモリさんは、範光さんにサトウキビの皮を剥いてもらい、噛んで出てくる甘い汁にびっくりしていましたね。(通常、このサービスは行っていません)
絞った汁を平らな釜に入れ、下からガンガンに火を焚いて煮詰めていきます。
ある程度ドロドロに煮詰まったところで、凝固と中和のために食品用の消石灰を加えます。
そこから冷やしていくと黒砂糖になります。冷やす前の段階で取り出したものは水あめの状態です。
水あめ大好きな近江アナウンサーが「今まで食べた水あめの中で一番おいしい!」と感動していましたね。
ブラタモリの本の中でも一番の思い出として黒砂糖の水あめを紹介していましたよ。
私も、ちょうどタイミングよく釜から冷やす工程の時にいたので、水あめをいただきました。
製品としては販売していないので、タイミングが良ければいただけることもあるそうです。
さきほどの水あめ状態の黒砂糖を、攪拌しながら冷ましていきます。
ここは時間との勝負です。みるみるうちに固まってくるので、すぐにバットに出して冷やします。
ここで、まだ温かい黒砂糖を少し頂いたのですが、こし餡のようにモロモロとしていて、砂糖というより和菓子のようでした。
出来立ての黒砂糖は、まだ暖かく、サトウキビの香りがグッと香ってきます。
製糖作業を見学したい方は朝の9時から11時の間、だいたい5回くらいの釜焚きをしています。
出来立ての香りと、出来立ての柔らかい黒砂糖を買いたいかたは、冷えてからのカット作業となるので11時から14時くらいの時間をおすすめします。
お店では、奥様の水間 智穂子(みずま ちほこ)さんと、お手伝いの方がハサミで小さく黒砂糖をカットしています。このようにカットして袋詰めにするのですね。
まだ水分を多く含んでいるので、水分を飛ばしてから封をします。出来立てを買った場合は、1日から2日は封をせず水分を飛ばしましょう。
出来立てを買って帰ると、車の中は黒砂糖の香りいっぱいで、幸せな気分になります。
◆ 水間製糖
鹿児島県大島郡龍郷町中勝1440
TEL: 0997-62-2431
笠利でも製糖見学。黒砂糖を使ったお菓子もお土産に。
番組では訪問していませんでしたが、もう少し足を延ばしてサトウキビ畑を見に行きましょう。その前に腹ごしらえ。
国道58号線を北上すること20分。美しい海岸線が続く笠利町用安に奄美きょら海工房があります。
本格的なピザ釜もあり、美味しいピザやパスタをいただくことができます。
こちらでも黒砂糖の製造を行なっているので、お食事の後は、製造工程の見学を。
こちらでは、サトウキビを絞ったジュースを飲むことができます。中のショップでは、黒砂糖を使ったお菓子もいろいろ販売していますよ。
◆ 奄美きょら海工房 https://www.kyora-umi.com/
鹿児島県奄美市笠利町用安1254-1
TEL: 0997-52-7345
「ざわわ、ざわわ」の音を聴きにサトウキビ畑へ
奄美きょら海工房を出て、さらに北上すること10分。
奄美空港を通り過ぎてしばらくすると、笠利町万屋・宇宿地区。左側に一面のサトウキビ畑が広がります。
冬の間は、2mぐらいのサトウキビの先端にすすきによく似た花が咲いています。
すすきとよく間違えられますが、これがサトウキビです。
丘の上に車を走らせ、サトウキビの緑と海の青、そして空の青のコントラストを見るのも素敵ですね。
風が吹くと、「ざわわ、ざわわ」と音が鳴ります。
この音もサトウキビ畑ならではの音。
でも、サトウキビ畑にはタモリさんも怖がっていた毒蛇ハブがいることがあるので、みだりに車を降りて歩かないようにしてくださいね。
また、農道も見通しが効きにくいので、走るときはゆっくりと。
奄美の黒砂糖作りの歴史と文化を学びに
サトウキビ畑の絶景を楽しんだら、奄美の歴史と文化について学ぶために、笠利町須野にある奄美市歴史民俗資料館へどうぞ。
まずは国道58号線をさらに北上。有名な絶景ポイント、あやまる岬に向かいましょう。
「あやまる岬」という看板で右折し、あやまる岬の少し手前にあります。
奄美の黒砂糖には、悲しい歴史もあります。
奄美群島で作られた黒砂糖は、江戸時代、薩摩藩の収益源の一つになります。
年貢米をすべて黒糖で代納させる「貢米換上納令」(1745年)以降は、「黒砂糖を一斤で売れば死罪、粗悪品製造者には足枷、一口でも舐めればむちうちの刑」という厳しい取り立ての話しが番組の中でも紹介されていました。
薩摩藩は、黒砂糖を琉球経由で清国に売り資金源にしていたのです。
米や野菜を作ることを許されず、ほとんどの土地をサトウキビ畑に変えさせられ、おかげで食べるものにも困る状況で重労働を強いられていたという奄美の黒砂糖のしょっぱい歴史についても、ブラタモリの中ではしっかり注目。
そうした状況下でもソテツの実をあく抜きして食べる人の知恵についても紹介していました。
資料館には、奄美の遺跡や民俗に関する資料が展示されていて、その中には黒砂糖に関するものもあります。
◆ 奄美市歴史民俗資料館 https://www.city.amami.lg.jp/bunka/kyoiku/bunka/rekishi/index.html
鹿児島県奄美市笠利町大字須野670番地
TEL: 0997-63-9531
さて、今回の黒砂糖をテーマにした旅はいかがだったでしょうか?甘い黒砂糖と奄美の歴史についても触れる、ちょっと文化度の高い旅となりました。
【今回の旅の行程】
名瀬
↓ 車で20分
水間製糖 (龍郷町 ) 見学+お土産購入 30分
↓ 車で20分
奄美きょら海工房 (笠利町 ) ランチ+見学 1時間
↓ 車で 15分
太陽が丘公園付近 (笠利町 ) さとうきび畑 見学 10分
↓ 車で10分
奄美市歴史民俗博物館 30分
↓ 車で1時間
名瀬
この記事を書いたフォトライター
勝 朝子
Webクリエイター、ITサポーター、奄美大島紬のポケットチーフ「フィックスポン奄美」代表。東京出身。縁あって奄美大島出身の夫と結婚。以来毎年奄美大島を訪れ、2012年奄美大島に移住。奄美の自然、人、文化、食べ物が大好きで、島の隅々まで日々探検中!