与路島がにぎわう一日「舟こぎ」マリンブルーの海の上での熱戦!
島コト
2018/03/22
水野 康次郎
皆さんは奄美の舟こぎという伝統行事に参加したことがありますか?
奄美ではイタツケという手漕ぎの舟をつかって競争する、舟こぎという行事があります。この舟こぎは、漕ぎ手6人と舵役の一人の計7人一チームでおこなわれます。
元々奄美大島周辺の島々の海岸線はリアス式海岸で、湾の奥に集落があるため、山からの道を越えて隣の集落に行くのが大変なことから、主な交通は手こぎの舟で行われていました。その交通に使われていた舟がイタツケです。そのイタツケは現在、交通としての利用は無くなってしまいましたが、今でもこの「舟こぎ競争」として残っています。
1850年代に幕末の薩摩藩士・名越左源太によって記録され出版された、奄美の民俗文化誌「南島雑話」でも、舟こぎは「五月五日ハレコギ」と言われ、多くの人が一番や二番の賞金の米を求めてこぎ争ったと書かれています。
現在では、7月から8月の真夏に行われることが多い舟こぎ競争ですが、 まだ5月5日前後に舟こぎが行われてる集落もあります。
今回はその集落の一つ、 与路島の舟こぎを紹介します。
与路島は加計呂麻島のさらに南にある島で、集落が一つしかなく、現在、約80人が住んでいます。与路島に行くには、古仁屋の港から定期船のせとなみに乗って行くか、海上タクシーを借りて行くことができます。
瀬戸内町古仁屋港から定期船せとなみに乗り込み、真っ青な海の上を走ること一時間半。請島を経由して与路島の港が見えてくると、マリンブルーの青い海が突然辺り一面に広がります!
与路島の舟こぎはこのマリンブルーの海の上で行われています。
舟こぎの日は、集落の人が手にチジン(島のお祭りで使う太鼓)を持って、口笛のはやしをかけながら、せとなみを港で歓迎してくれます。
この瞬間から与路島の舟こぎにきた!とテンションがあがります。
港に降りて舟こぎの受付を済ませ、集落の人が準備してくれているテントに入ります。
舟こぎは祭りでもあるので、受付が終わるとすぐにお酒や食べ物が振る舞われます。みんな食べたり飲んだりしながら、準備を整え、すべて揃うと舟こぎ競争がスタート!
最初は開会宣言から始まり、ルールや出場チームの説明を行った後に、舟こぎ競争が始まります。
与路島の舟こぎは地元青少年団や婦人部、小学生チーム、島外からのチームを含めた一般、与路島集落内の東西対抗などの競争がおこなわれています。
チームによっては本気で練習をしてきて速さを競うチームもあれば、一回も練習せず参加することに意義があるという楽しむためのチームもさまざま。
皆、各々の楽しみ方で参加し、他のチームを応援するときは、飲みながら指笛を鳴らしたりして楽しんでいます。
舟の乗り降りは一箇所で、乗り降りするときにまわりでチヂンを叩いたりするので、リズムにあわせて突然、六調を踊る島人も。
この舟こぎ、地域によってちょっと様子が違いますが、与路島では距離が約180メートルで、出発からゴールまで時間にするとわずか1分から2分です。横からみているとそんなに大変そうではありませんが、実際に舟を漕いで見るとものすごい疲れます!実際、舟から上がる時は皆フラフラになっています。
2017年に筆者が経営しているばんめしやぽっちの常連さんや友人を誘い、チームを作って参加しました。メンバーはほとんどが初めて漕いだ人達だったので、もちろん?結果はビリでフラフラになりましたが、参加した皆さんはすごく楽しそうに漕いでいたので、出場できて良かったです!
大会は4時間前後おこなわれ、無事全部の競争が終わると、最後は表彰式。
1850年代だと勝ったチームはお米をもらってたそうですが、現在では主に賞金、また参加賞として日用品をもらうことができます。表彰式が終わると六調で踊りおさめ、舟こぎ競争が全部終了します。帰りの定期船せとなみも、船が出港する時に島の皆さんでチジンを叩き、指笛を鳴らしながら船が見えなくなるまで見送ります。
そして夕方、片付けが終わるとそのまま打ち上げに入ります。
打ち上げは公民館の中で行われ、 青壮年団、婦人部、集落の人と一緒に盛大に行われています。
舟こぎのあいだ、実行委員会の皆さんは忙しいのでゆっくりできませんが、ここで初めて皆さんが落ち着いて飲むことができます。昼間のレースや今年の運営状況など、飲みながらわいわいと話しが続きます。奄美ではあちこちの集落でも見られますが、与路島にもカラオケの本格的なセットがあるので、最後はカラオケ大会が始まり、夜がそのまま更けていきました。
与路島の舟こぎ大会は、外からのチーム参加も OK です。
例年、5月5日のゴールデンウィーク前後に舟こぎを行われる予定なので、 皆さんも是非友達を誘ってチームを作り参加してみてくださいね。もちろん初心者でもOKで、とりあえず6人の漕ぎ手がいれば、一番難しい舵を地元の人にお願いすることも可能です。
与路島には民宿もあり泊まって遊べるので、そのまま泊まり、集落散策や夕日、満天の星空で与路島を堪能するのもいいかもしれませんね!
奄美大島はもちろん、加計呂麻島ともまた違う魅力がある与路島。
舟こぎ競争は、小さな島が一番にぎわう大きなイベント。島の魅力を体感できる絶好の機会なので、ぜひ機会があれば参加してみてくださいね。
この記事を書いたフォトライター
水野 康次郎
自然&文化研究者/飲食店経営 石川県出身。2000年にウミガメの調査で奄美大島に移住。その後も本土や海外、島を行ったり来たりしながら2011年に完全移住。現在、昼は調査や雑多な活動をぷらぷらしながら、夜は「ばんめしやぽっち(https://potti.amamin.jp/)」を営業中。