奄美大島で老若男女から親しまれるコロッケとササミフライ。「松坂屋」はおいしさの宝庫
島食
2018/03/29
間瀬 るみえ(TLWorks)
奄美大島の人々がこよなく愛する「ササミフライ」。
スーパーはもちろん、お弁当屋さん、総菜屋さんにあるササミフライを、みんなお昼や夕飯、おやつ代わりに買っていきます。
1本100円前後なので、学生にとっては定番のおやつ。これで育ったという島人は多いはずです。
そんなササミフライを提供し続けている、人気の惣菜屋さんのひとつが「松坂屋」。
奄美市名瀬の中心部に位置し、ササミフライだけでなく、コロッケ、やき豚、肉団子などなど、さまざまな総菜を販売しています。
島人に愛され続けるお店やコロッケ&ササミフライについて、お話をお聞きしました!
名瀬中心部、アーケードを抜け県道81号線沿い、黄色と赤の看板が目印。
松坂屋の女将さんの松井千早登さんにお話を伺いました。
原点は、お父様の起業。その場所がここ奄美だった。
松井さんは、四国の小豆島出身。
中学1年生の夏、奄美大島へ。
そんなふうに移り住んだ奄美大島名瀬の地で、昭和36年、お父様と叔父夫婦とお兄様がお肉屋さんをオープン。お肉の他にもコロッケやトンカツなど総菜も販売することとなり、松井さんのお兄さんが担当。一ヶ月間神戸の肉屋に修行へ行くなどして学び、販売を始めました。
これが、松坂屋の原点。しかしこの頃は「丸八(まるはち)」という屋号でした。
当時、コロッケは1個8円。
もちろんササミフライもありましたが、グラム売りをしていたので、その頃は今ほど人気の商品ではなかったそう。
そこから二十数年の月日が経ち、叔父もお兄さんも肉屋以外のお仕事をするとのことで、一度店を閉めたそうです。
新しく「松坂屋」として、再スタート!奥様の女性目線の一声で大ヒット!
店を閉めたものの、「こんな美味しいコロッケなどの総菜をお客様に食べてもらえなくなるのがもったい無い」と考えた松井さん。父と兄に代わり、松井さんがご主人とともにお店を再開させることを決めました。
(現在の価格表。種類が多くて何を買おうか迷います。)
昭和62年12月に、再オープン。前のお店では一口カツやササミフライはグラム売りでしたが、松井さんが、
「女性は、1個いくらか分からないものを買うのは抵抗がある。だからと言って1個いくらですか?とはなかなか聞けないものよ。」
といった一言から、これまでのグラム売りから1個売りに変更。
すると、これが、大成功!!
(ショーケースの中には手書きの価格表。たくさんの商品が並んでいて目移りします。)
買いやすくなったササミフライは、主婦のお助け総菜として、また学生のおやつとして大人気に。
当時は、ササミフライ1個70円で販売し、30年経った現在は油の値上げなどで1個100円になっています。
「夫婦のこだわり」が長続きのワケ。時代と共に、変化することとしないこと。
お父様の時代からいったん閉店し、再開してと、さまざまな歴史を背負った松坂屋。けれども50年を経ても島人に愛されているのは理由があるといいます。
「年月とともに世代でお客様が入れ替わっていくんですよね。
その頃子供だった子が、大人になり、子供を産んでそのまた子供へと。相対してお客様が減らないのはそのおかげさま。」
と松井さん。子どものときに食べたおいしい記憶は大きくなっても残り、次の世代へと受け継がれていっているようです。
いつ食べても変わらない「松坂屋の味」
平日だった取材日、お店は夕方頃から一気に混雑していました。
松井さん夫婦には、「いつ食べても松坂屋の味であること」に、こだわりがあります。
使っている油や衣、その他の材料も昔からまったく変わっていません。
(揚げたてコロッケは1個70円)
コロッケは、じゃがいもよりも肉の割合の方が多いといいます。なんとまぁ有り難い。
ササミフライは、生のササミにこだわり、絶妙な塩コショウが旨さの秘訣です。
「時代の変化と共に変化しなければいけないこともあるが、変わってはいけないのは、いつ食べても変わらない味。」
松井さんとご主人の、商売への意識がひしひしと伝わりました。
学生、子供達、おばあちゃん・・・たくさんの思い出が勲章。
松井さんがお店に立って30年。
以前の店は、バス停が目の前にあったので部活帰りの学生が家に着くまで歩きながら食べて広めてくれたそうです。コロッケとササミフライが、学生の小腹が空いたときの定番だそうです。
たくさんの「松坂屋」の思い出があり、その中でも、忘れられないエピソードが2つ。
1つ目は、まだ小学生にもなっていない子供がお母さんに、お誕生日に松坂屋のコロッケをリクエストしてくれたこと。
2つ目は、宇検村から名瀬に用事に来るおばあちゃん。名瀬に行く時は必ず、孫が「松坂屋で肉団子を買って来て」というそう。買ってこれなかった日には、「なんのために名瀬にいったのよ!」と血相を変えて怒られたといいます。
松坂屋を楽しみにしている人たちのために、まだまだ頑張らないといけない!と笑顔で話してくれました。
私も取材させて頂いた後、ササミフライ、コロッケ、肉団子を購入。
帰宅し、即実食。やはりたまらない癖になる味。
松坂屋は、ワンコインでこんなにHAPPYになれる、おいしさの宝庫なのです。
今宵の食卓に。
晩酌のお供に。
奄美観光での小腹が空いた時に。
奄美市名瀬に来られた際には、是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
この記事を書いたフォトライター
間瀬 るみえ(TLWorks)
フリーライター/ダンス講師 大阪市出身 バリバリの関西人でシティガール。2017年8月、