【島ジューリ漫画|vol.2】奄美の家庭料理ニムンとは?
島コト
2018/11/21
才木美貴
うがみんしょーらん。
私は瀬戸内町地域おこし協力隊の才木と申します。趣味のイラストや漫画を使い、奄美のおいしい島ジューリ(島料理)を、私なりの視点から全6回でご紹介させていただきます。
■島ジューリ漫画(全6回)■
【島ジューリ漫画|vol.2】奄美の家庭料理ニムンとは?
【島ジューリ漫画|vol.3】シマッチュはやっぱり落花生が好き!
【島ジューリ漫画|vol.4】クーニャとはなんですか?
【島ジューリ漫画|vol.5】アンダギーといもてんぷら
【島ジューリ漫画|vol.6】これがホントの島の味コーシン
第2回目の島料理は、昔から食べられているシブリのニムン(冬瓜の煮物)を私が住む瀬戸内町蘇刈集落の元料理人の方に教わったものをご紹介します。
島の人の馴染み食材
まずは材料です。
シブリ(冬瓜)は、島ではとてもポピュラーな野菜です。
どの家庭にもだいたい、大きなシブリがゴロゴロと転がっているものです。とある家庭の玄関先では40cm超えのシブリが5個出てきて2個も頂いてしまいました。
落花生が出汁になる
次に煮物の出汁について。
今ほど調味料がなかった時代、島では落花生を細かく砕いて出汁として利用していたそうです。今でもその調理方法は家庭によっては現役で親しまれているようです。
しかし、非常に手間がかかるということで、現在の粉末調味料などに代わっていったようです。
取材開始当時(2018年夏)島では落花生収穫の最盛期でした。落花生を代表とする豆類は島の方の大好物といっても過言ではないです。何か集まりがあれば、とりあえず何かしらの豆を出しておけば間違いないとさえ感じています。
落花生の出汁づくりがどれだけ手間なのか、体感してみたくなり出来るだけ昔のやり方でやってみることにしました。
落花生収穫体験
畑をしている知り合いの方に、落花生の収穫体験を願い出ました。島の方からすれば、料理するんだったら収穫したのをあげるよと言ってくれるのですが、ここは興味を優先!
台所ではなく早朝の畑に向かわせていただきました。
お世話になった畑は、ご夫婦で収穫を行っており、時々お手伝いにお隣さんがやってきます。本人は暇つぶしだと言っています
お父ちゃんが先に畑に入り落花生を引き抜きます。この作業は大した苦労ではない様子で次々に引き抜いていきます。
「ジマメ(落花生)はオレのじゃない。母ちゃんのだ。ほれ。上等だがね。」と母ちゃんのきれいに育った落花生を収穫してみせてくれます。どうやらこちらの畑は分担制になっているようです。
収穫した落花生から上等なやつを出荷するからと仕分け作業をします。ここで私もようやくお手伝いに参加します。選別を教えてくれるのは、助っ人のお隣さんと、お母ちゃん。
「この仕分けが面倒なのよ。よくこんなもん作ろうって思うね。」とお隣さん。
「ぬーがしゃ!?(どうしてよ!?)美味しいっちばー!」とお母ちゃん。この二人の会話は実は島の言葉過ぎて聞き取れないのが実際なんです。島外から来た私には多分こんなようなこと言ってるんだろうなくらいにしか聞き取れません。そんな、いわば”外国語”が飛び交う中、落花生の選別のコツを聞いてみると、
『固く、白くない』ことがポイントだそう。豆が一つか二つかは関係ないそうです。
これを聞いても正直よくわかりませんでした。固いのはわかっても白くないっていうのがわからない。今記事を書きながら振り返ってみてもわからないです。これは熟練度がいるのでしょうね。素早くなれた手つきで仕分けするお隣さん。
しかしこの作業、手は土でドロドロになるし、一つひとつちぎるので他の野菜に比べて確かに手間がかります。
作業に合流したお父ちゃんから、「豆を取りすぎるな、ヤギのエサにする」と突然言われなんのことだと思っていたら畑の奥にいる子ヤギ5匹に選別後の落花生の葉を与えていました。
ふだんはトベラ木を与えているのですが、落花生がある時期は大好物だからと落花生の葉を与えて早く太らせるようです(奄美は沖縄と一緒でヤギを食べる文化があるため)。
それにしても、子ヤギたちの食いつきっぷりは凄かったです。島の人だけでなくヤギも落花生が好きだということが判明した瞬間でした。
エサ(落花生)をとられてなるものか!?と言わんばかりに立ちはだかってこられました。
手間すぎる落花生の下準備
収穫後の生の落花生
料理を教わるのは、元料理人である集落の青年団長さん。団長さんに落花生が手に入ったことを伝えると、とりたての生は殻つきのままにしておくと、生臭くなるので殻をむいておいてといわれたのでやるのですが、これがまたとてつもなく手間な作業でした。
乾燥したものよりも遥かに硬い殻は、5個ほど割った時点で「あといくつ割らないといけないのか…」と、絶望を味わうものでした。
そんな時タイミングよく旦那が帰宅したので手伝ってもらいました。
割ったもので薄皮が残っているものは芋洗いの要領で流水でこすりあわせながらおとしました。
これで下準備は完了です。
味付けはお好みでシブリのニムンをつくろう
教えてもらったレシピは、以下の3つ。
・いわゆる昔の何もない時代に作っていたのに近い【レシピA】
・お味噌で食べやすくした味噌汁仕立ての【レシピB】
・生の落花生の代わりに豆乳を代用した【レシピC】
Aのレシピを基本として、BとCは調味料を追加・変更したものになります。
Cにいたっては、これはオレ流だからな!オレが豆乳好きだからだぞ!と島の家庭料理ではないことを念押されました。
『材料』
A冬瓜
A下準備した生の落花生
A粉末タイプのいりこ出汁、なければいりこ
A塩
B砂糖
B味噌
Bしょうがチューブ
C豆乳
『手順』
【レシピA】
1、冬瓜を食べやすいよう一口サイズに。この時タネはのぞく。かぶるくらいの水で煮る。
★丸く大物を切るのが下手だという私にコツ教えてくれました。これでまな板の上から転がることはないですね。
2、生の落花生を袋に入れて砕き、あればすり鉢で細かくしたものを鍋をおおうようにたっぷりと入れて中火でふたをする。灰汁はとらない。
★落花生は好みでもっと細かく砕いてもいいようです。シブリが見えなくなるくらいに入れてもいいほどなんだとか。
3、色が出てきて冬瓜が透き通ってきたらいりこ出汁を入れ塩で整える。
【レシピB】
◎レシピAに砂糖と味噌としょうがチューブを溶き入れて味付けする。
【レシピC】
◎レシピAの落花生の代わりに豆乳を水の半量程入れる。あとはAと同じ手順。
島の香りただよう逸品できました!
落花生のいい香りと青臭さのない優しい味わいの煮物が出来上がりました。
盛り付けのコツを聞いてみたら、食材には表面というのがあって、冬瓜の場合丸くなっている方を向けて盛り付けるときれいに仕上がるんだそうです。
ついでだからと、余ったレシピBの汁で豆腐も煮てみました。
レシピA(左下)B(右上)c(左上)ついでレシピ(右下)
おまけ:島のお菓子紹介
りゅびもち
これもまた作るのが大変で、ご近所で協力して作っていた所もあるようです。黒糖・餅粉・水飴などでできた、やわらかいお餅です。お盆のお供え菓子として今でもお供えする方もいるのですが作られる方は少ないようです。
あんまり美味しくなかったけれど、子供時代に作るのを手伝った記憶や近所に配ってまわった記憶と、今となっては良い思い出であることを50代以降の方は話してくれます。
この記事を書いたフォトライター
才木美貴
瀬戸内町地域おこし協力隊として情報発信ばかりしている主婦。2013年から主婦をしている割には、料理に対する苦手意識から手抜き料理ばかりの為、料理レベルが一向に上がらないのが悩みから諦めに移行中なのが悩み。2016年に風光明媚な瀬戸内町の蘇刈集落へ移住。「移住は奄美」をキャッチフレーズにコアな瀬戸内町の情報をSNSなどで発信。 HP:https://iju-amami.strikingly.com/ SNS:Twitter&Facebook&Instagram「移住は奄美」