天の川ハンターと行く奄美星空紀行VOL.4| 宇検村エリア
島景
2018/12/20
しーまブログ編集部
都会では決して見ることのできない美しい星空の魅力について、奄美大島の星を追いかけている「天の川ハンター」荒木マサヒロさんに、全6回でレポートしてもらいます。
今回は第4回目、奄美大島の南西に位置する宇検村エリアを巡ってみましょう。
「湯湾岳」という奄美群島最高峰の山があり自然豊かな宇検村。
冬の北風を遮る高い山々に囲まれているため、冬でもおだやかな気候が特徴的。冬の星空探索にもうってつけの場所です。
いまから紹介する星空に実際に会いに、ぜひ足を運んでみてくださいね。
■天の川ハンターと行く奄美星空紀行(全6回)■
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焼内リフレクション
瀬戸内町古仁屋から久慈(くじ)を通り、名柄(ながら)に出て湯湾港(ゆわんこう)をめぐって宇検(うけん)に向かうルートを通るとき、このように湖かと思うほど鏡のような海面をよく見かける。
ハッとするリフレクション。奥の奥までピタリ!ここ焼内湾(やきうちわん)にはこの美しさがある!
海面に浮かぶ逆ささそり座
〜 焼内湾 湯湾港 埠頭
宇検村湯湾の県道79号線に沿いに、視界が広がる埠頭がある。道を挟んで「ゆどぅんじゃー前倉(Rest House Maekura)」 という、ふるさと納税で整備されたバリアフリーのシャワー・トイレを備えた休憩所がある。“ゆどぅんじゃー” とは 奄美の方言で “休憩所” という意味だそうです。
2018年7月9日1時9分
立ち昇る天の川は見事。加えて焼内湾の十八番(おはこ)、リフレクション。海面に映し出されているのは逆さになったさそり座。「逆ささそり座」。
このように天の川が垂直に天と地を結ぶように見られるのは5月中旬から9月下旬くらいまでの期間。ここでひとつ大切にしておきたいことがある。イメージ力を備えるには知識が必要。星空と向き合うとき、知識があれば例えはっきりと星が見えないときでも、イメージ力で描き出せるようになりますよ。
都会で天の川を見ることは困難ですがさそり座を見つけることは容易。さそり座が見つかると、見えなくてもそこには必ず天の川がある。絶対にある。見えないのは見えなくさせられているだけなんです。
真横に横たわるさそり座を見つけたその時、天の川は頭上に大きなアーチを描くでしょう。
思わず立ち止まってしまう。
〜 田検(たけん)
街灯が少ない宇検村は、実はどこも観望ポイントなのだが、「もっと見えるところはないか」とつい欲が出てしまう。
焼内湾を囲むように14の集落がある宇検村。南と西の星空を見たいときは湾の北側を走る。見るだけではなく撮影もしたいのでついつい立ち止まってしまう。
昼間だと普通に素通りしてしまう光景。
2018年7月9日1時49分
峰田山(みねたやま)公園を目指そうと湯湾から田検に入ると、いい感じでヤシの木と天の川の直立。こんな光景に出会うと立ち止まりたくなる。
南向きの爽快な眺望
〜 峰田山公園
起伏が多い奄美大島。視界を遮らないためには高地に行くか岬に行くか。高地だと宇検村では峰田山がおすすめ。
峰田山に行くには、芦検(あしけん)集落を越えてネヅン崎あたりから登って行く道と、宇検集落から大和村今里集落に向かう、途中から登って行く道がある。
4月頃にはツツジが咲き乱れる人気の公園だ。約30台ほど停められる駐車場もある。トイレはあるのだが2018年12月8日現在では故障中につき閉鎖されていた。
2018年8月12日20時30分
公園の左手に目を向けると左から順に名柄(ながら)、佐念(さねん)の集落の灯りが見える。焼内湾の奥にある湯湾は左側の尾根の向こうになり、公園からは見えない。公園から見ると名柄が南になる。
夏はこのように晴天でなくても雲が流れていれば雲の切れ間から天の川と出会うことができる。ちなみに名柄の上空に見えるひときわ眩しく輝いているのがさそり座のアンタレス。
2018年11月7日20時25分
公園から見ると焼内湾の入り口は右手(西)になる。秋になると天の川の位置はかなり西に移り、北側に傾く。さそり座が姿を消すと東の空にはオリオン座が現れる。左から順に名柄(ながら)、佐念(さねん)、阿室(あむろ)、屋鈍(やどん)集落の灯り。夜になると集落の位置がよくわかる。12月22日ころになると日没後、星が見えてくるころには南斗六星も沈んでしまっている。
サンセットポイントで七夕星
〜 生勝(いけがち)見晴台
駐車場あり。東屋あり。トイレなし。
2018年11月7日20時58分
峰田山公園を下って30-40分。生勝(いけがち)見晴台はサンセットポイントなので西に向かって眺めがいい。夏の終わりになるとこのように天の川が右に傾き、夏の大三角が七夕星のアルタイル(わし座)とベガ(こと座)を底辺とした形で見られる。もうすでにシーズンは終わっているが意外にもギリギリまだ見ることができる。
12月22日あたりだと日没が17時半ごろ。夕日を楽しんだあとの19時ごろ、すっかり暗くなると沈み行く七夕星と夏の大三角が現れるのを見ながら、来年の再会を願ってはいかがでしょう。
北向きの爽快な眺望
〜 屋鈍(やどん)見晴台
駐車スペースあり。東屋あり。トイレなし。
2018年11月7日22時39分
屋鈍見晴台は焼内湾に面して北に少し突き出しているので西、北、東の見通しがいい。見晴台から屋鈍集落を見ると西の星空を望むことができる。この時は右にこと座のベガ、天の川を挟んで小さなひし形のいるか座、赤い火星、秋の一等星フォーマルハウト(みなみのうお座)とほぼ一直線になって見える。わし座のアルタイルがちょうど集落の上の稜線にかかりまもなく沈んでいくところだった。12月22日あたりだと20時ころこのように見える。
さそり座の姿はもうない。ということはオリオン座の出番。後ろを振り返ると・・・
2018年11月7日22時42分
西の空からさそり座の姿がなくなり見晴台から焼内湾の右(東)に目を向けるともうすでにオリオン座が登場している。オリオン座の方向に湯湾集落があるのだが山影で見えない。見えている灯りは右から順に生勝(いけがち)、久志(くし)、灯りが漏れているあたりが宇検(うけん)。
あと1時間もすればこいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウスが登場して冬のダイアモンドの全貌が姿を現わす。12月22日ごろだと20時半ころには東の空に現れる
北斗七星・カシオペア座観望の特等席
〜 屋鈍海水浴場
駐車場、トイレあり。
2018年11月7日4時28分
季節は冬。北斗七星とカシオペア座。ここ屋鈍からは正面に無人島・枝手久島(えだてくじま)がありその上空に見える。ともに全貌が見えている時間はおよそ4時間半。このように北極星を見て右に北斗七星。左にカシオペア座と見える季節は冬から春。その逆に北斗七星が左、カシオペア座が右だと夏から秋の季節。
このバランスをけっこう気に入っていて、このように見える時間は、
・12/24 01時00分
・12/31 00時30分
・1/7 0時00分
・1/14 23時30分
・1/21 23時00分
・2/6 22時00分
・3/9 20時00分
1週間でほぼ30分早くなる。
星空は僕らに季節の移り変わりをいつも知らせてくれている。
荒木マサヒロ
奄美の自然をこよなく愛すデジタルコンテンツクリエイター。天の川ハンターの異名を持ち奄美の天の川を撮り続けている。作品に iBooks「天の川見に行こっと!」シリーズがある。また自ら癒されながら収録している奄美の波音や鳥のさえずりのヒーリングネイチャーサウンドアルバムはハイレゾワールドチャートに登場している。「天の川・トークイベント」「星空撮影ワークショップ」も不定期に実施中。
Facebook 「天の川見に行こっと!奄美・瀬戸内」https://www.facebook.com/nonicotto/
この記事を書いたフォトライター
しーまブログ編集部
2010年に誕生した、シマを愛するすべての人々のための奄美群島地域情報サイト。日々あがってくるシマッチュたちのブログを主軸に、編集部が取材したグルメ・不動産・仕事・イベントなどの情報まとめなどを掲載。フリーペーパー「みしょらんガイド」「amammy」も配布中!しーまブログ