日々の暮らしに幸せを感じさせる夕日~大和村国直海岸~

島景

2016/04/28

ペン

中村 修

僕の住む大和村の「くんにょり(国直)」は人口120人足らずの小さな集落。奄美市名瀬から30分という立地にありながら国定公園宮古崎や白砂の国直海岸、海岸線を彩るアダン林、家々を囲むフクギ並木など美しい自然景観が残る。そして、僕たち「くんにょりんちゅ(国直集落民)」の一番の自慢は国直海岸に沈む夕日と浜辺に集う人々の光景だ。

白い砂浜が美しい大和村の国定公園国直海岸

国定公園国直海岸

カーブミラーの影が伸び、集落が茜色に染まる夏の夕暮れ。子どもたちに帰宅を促すマイク放送とは裏腹に、人々は海岸へと降りてくる。子どもは波打ち際で海水浴に興じ、老人たちは西の空を眺めながら明日の天気を占う。護岸に陣取る男たちは夕日を肴にビールを酌み交わす。いつものメンバー、いつもの話題、代わり映えしない光景。みんなで夕日を眺めながら過ごす夕暮れ時は集落民がホッとする一時だ。

夕日を肴にビールを酌み交わす男たち(国直海岸)

夕日を肴にビールを酌み交わす男たち

集落民に見つめられながら夕日が沈み、海岸が静かな闇に包まれる頃、人知れず砂浜に訪れる者がいる。

産卵のため上陸するウミガメだ。

ウミガメは5月~7月の間、夜間に上陸し砂の中へ130個ほどの卵を産む。産み落とされた卵は2カ月もするとふ化し海へと泳ぎだす。海岸では生命のスペクタクルが繰り広げられる。

産卵のため上陸したアカウミガメ

産卵のため上陸したアカウミガメ

また、国直の人々は、ウミガメの産卵やふ化に悪影響を与えないようにと、夏の間は海岸沿いの街灯に赤いカバーを被せウミガメに配慮している。住民が不便を強いられながらもウミガメを保護するのは、集落民が今もなお海からの恩恵に授かり、いつまでも自然と共生して暮らしていこうという思いの一端だ。

海へと歩き出す子ガメ

海へと歩き出す子ガメ

そんな、国直海岸に今シーズン新たなレジャースポット、国直ウミガメ公園(仮称)が開設した。

同公園は、ウミガメが数多く産卵する国直海岸東部に位置し、駐車場や公衆トイレ、東屋や展望デッキを備え付けている。砂浜へと連なる開放的なスペースは海水浴やBBQにうってつけだろう。夏には隣接地に海の家がオープン予定というのも楽しみだ。

国直ウミガメ公園(仮称)

国直ウミガメ公園(仮称)

また、国直集落では「国直集落まるごと体験」と題し、多くの体験観光ツアーを提供している。アオサ摘みやウニ割りといった漁業体験のほか、宮古崎へのトレッキングやサイクリング、SUP(スタンドアップパドル)やシーカヤック、モーターボートによるクルージングなど豊富なメニューをそろえている。

夕焼けSUPツアー

夕焼けSUPツアー

アクティブにマリンスポーツを体験するもよし、夕日を眺めながらのんびりと過ごすのもよし。国直集落の楽しみ方は千差万別だろう。

美しい自然を守りながらも新たな観光へチャレンジする国直集落。

今年の夏は「くんにょり」がアツくなりそうだ。

第7回宮古崎つつじウォーク

第7回宮古崎つつじウォーク

 

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この記事を書いたフォトライター

中村 修

中村 修

島おこしプランナー/NPO法人TAMASU代表。故郷の奄美大島、国直集落を愛するあまり会社を辞めNPO法人を設立。奄美大島の自然や文化を活用した島おこし活動に取り組む。現在は地域住民と共に「国直集落まるごと体験ツアー」を開催し集落民一体となったシマ(集落)づくりを目指す。

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