夕陽を見るまえにあの人に会いに行こう。西古見に来たら一度は訪れたい「加商店」
島コト
2016/05/26
トヨヤマ コトネ
奄美市名瀬から車で2時間。瀬戸内町古仁屋の街からは車で1時間。奄美大島最西端の集落「西古見」。
この集落の特徴は未だに残る、サンゴの石垣。ハブが石垣の中に潜みやすいため、奄美大島ではそのほとんどが崩されており、この景色はすごく希少だ。
集落民は少なく、わずか36名(2016年4月末現在)。その集落内に昔からある加商店を訪ねてみた。
県道沿いの「西古見」とかかれた看板のすぐ近くに商店の看板が。
これを見つけたらもうばっちり。奥に見えるのが「加商店」だ。
中に入ると、「いらっしゃい」と素敵な笑顔の女性が。この商店をきりもりする加 早苗さん。
商店の中はものがたくさんで、ひととおりの生活用品などが揃う。集落民にとって欠かせない商店なのだろう。
「初めて西古見にきたのね。これどうぞ」と渡されたのは二つの紙。
西古見の観光案内と西古見の歴史が書かれている。この紙を元に西古見集落の沢山の歴史を教えてくれた。聞けば加さんはここを訪れる観光の方に必ずこの紙を渡し、集落の案内をしているのだそう。西古見の観光大使のような存在だ。
「これはね、西古見の老人会で作っているんだけど、老人会と言いたくないから黒潮会って名付けたのよ。ふふ」と元気に笑う。
西古見といえば夕陽が見どころ。夕陽のことも色々と聞いてみた。
「西古見の夕陽は本当に綺麗ですよ。でも冬がとくに綺麗。冬はね三連立神のちょうど真ん中に夕陽が落ちるの。
孫がまだ小さいころ、よく一緒に夕陽を見ていてね。夕陽って線香花火の火の玉に似ているでしょう?夕陽が海が落ちる瞬間に『ジュッ』って音がしたね~!なんてことを言いながら夕陽を見ていたのよ~」と懐かしげに話す加さん。新しい夕陽の眺め方まで教えてくれた。
「なにもない集落だけどね、私は色々と物ごとを楽しく考えるのが大好きでね。この商店の前の道を銀座通りと名付けたり、郵便局につながる道を官庁通り、神社につながる道を表参道とよんだりしてるの」
「この写真は皆が愛車のベンツを押して銀座通りに集まっているところ」
と西古見での楽しい生活の様子を教えてくれた。
なにもないと悲観するのではなく、それを楽しむというその姿勢に教えられるものが沢山ある。
本土から奄美大島に住んでもうすぐ2年。そろそろ都会が恋しくなってきた私に加さんの話はズドンと胸に響く。気の持ちようでこんなに世界が変わるんだなぁと感じた。
周りの集落の人たちも加さんのその人柄に引き込まれ、きっと楽しい生活を送っているに違いない。
加商店を後に、集落内を散歩する。ここが加さんのいっていた”県庁通り”だ。
この話を聞かなかったらなんとも思わないただの道だったかもしれない。
途中にこんな素敵な道も見つけた。
木漏れ日が降り注いでとても神秘的な道だ。まるでジブリの世界に迷いこんだかのよう。
自然たっぷりの西古見集落を散策したあと、三連立神の向こうに夕陽が見えた。
沈むにつれて赤く色づく夕陽は海に落ちた瞬間、本当に「ジュッ」と音がしそうだった。
西古見にきたら一度は「加商店」を訪ねてみてほしい。
元気いっぱいで愛嬌のある加さんが、独特な西古見集落の楽しみ方や、生活を豊かにする知恵を教えてくれるだろう。
この記事を書いたフォトライター
トヨヤマ コトネ
フォトグラファー/しーま編集部。 奄美2世。大阪のフォトスタジオで勤務後、 幼少期から何度も訪れていた思いいれのあるシマに2014年移住。写真や言葉にするのが難しい奄美の美しさをどう表現するか日々模索中。