奄美大島の遺跡から太古のロマンを探る「奄美市歴史民俗資料館」

島コト

2018/01/05

ペン

田中 良洋

空港から車で5分もかからないところに奄美大島の有名な絶景スポットあやまる岬があります。

このあやまる岬のすぐ手前に奄美市歴史民俗資料館があるのをご存知でしょうか。

奄美市笠利町の奄美市歴史民俗資料館

たった200円で入れるこの施設ですが、中には奄美大島の遺跡で発見されたものや昔使っていた民具が数多く展示されています。

遺跡から発見された展示物は当時の生活の様子を垣間見せてくれます。遺跡から文化や生活を想像すると、歴史のロマンを感じませんか。

今回は歴史や遺跡好きにはたまらない奄美市歴史民俗資料館をご紹介します。

 

奄美大島には遺跡がたくさん存在する

 

実は奄美大島では遺跡がたくさん発見されています。

特に笠利地区の土盛海岸の辺りは古くからリーフが発達しており、海で魚を獲りやすかったため人々が住むのに適した場所でした。

そのため空港から奄美市歴史民俗博物館までの間だけでも、長浜金久遺跡、下山田遺跡、宇宿小学校構内遺跡、宇宿高又遺跡、宇宿貝塚、喜子川遺跡、土盛マツノト遺跡と7つの遺跡が発見されています。

古くは約6000年前の物も発見されており、縄文時代の生活の様子が見られます。

奄美大島の遺跡で発見された埋葬犬

この写真は縄文時代前期に奄美大島の遺跡で発見された埋葬犬です。当時の埋葬犬は全国的にも珍しく、犬が人間にとって大切な存在であったことがうかがえます。

奄美大島の遺跡から発掘された人骨

写真の人骨も奄美大島から発見されたもので、弥生時代のものだと言われています。

発見された当時はお腹に幼児がいる状態で発見されたそうです。当時の女性にしては高価なガラスの装飾品をつけていたこと、足の骨の劣化が見られなかったことから、位の高い人か祭司者的な人だったのではないか、と推測されています。

(こちらの展示物をご覧になるときは一礼をしてからご覧ください。)

 

土器も数多く展示されており、縄文時代の物から奈良時代や平安時代のものもありました。

奄美大島の土器

写真の土器は飛鳥〜平安時代に使われていた兼久式土器です。製作するときに葉を底に敷いていたため葉の痕が見られるこの土器は、奄美群島で広く使用されていた土器だそうです。

一方、あやまる岬からも見える隣の喜界島では、本土産の土師器が多く見つかっており古代の律令国家と深い関わりがあったのではないか、と考えられているそうです。

 

琉球、薩摩、アメリカと交流があった奄美大島

 

古くから琉球王国と交流があった奄美大島には、琉球文化を思わせるものが数多く残されています。

奄美大島と琉球文化

こちらは琉球嶌真景(とうしんけい)という、18世紀後半から19世紀前半にかけて岡本豊彦が描いた絵の一部です。琉球と名がつくので沖縄のものかと考えられていましたが、絵に描かれている祭りや地形は琉球のものとは考えにくく、調べた結果奄美大島のものであったことが分かっています。

奄美大島の昔の骨壺

この写真は亡くなった人の骨を入れる骨壷ですが、琉球のお城と似たような作りをしています。

江戸時代には薩摩の領地となった奄美大島でしたが、当時薩摩の人からは同等の扱いを受けていなかったようです。そのため髪型は同じ髪型にはできず、琉球の人々と同じような髪型をしていました。

これは差別とも考えられますが、奄美大島が薩摩の領地だということがバレてしまうと税の対象になってしまうため、あえて奄美大島の人には同じ格好をさせなかったとも言われています。

 

時代は少し先に進み、第二次世界大戦後には奄美大島は米軍政府の統治下におかれていました。当時、奄美大島では円でもドルでもない通称B円と呼ばれる軍票が使われていました。

奄美大島米軍統治下のB円軍票
1953年12月25日に日本に返還されましたが、その時の新聞も貴重な資料として残っています。

奄美群島本土復帰の新聞記事

 

遺跡を知り、奄美大島の集落を巡る

 

資料館には、展示物の他に各集落ごとの遺産をまとめたボードがあります。

奄美の集落ごとの遺跡

この資料を中心となって作成されたのはスタッフの川畑榮さん

奄美大島の町は北と南でも文化や言葉が違いますし、集落ごとでも文化が違います。

館長の久伸博さんと川畑さんは「資料館はあくまできっかけでしかない。本当の奄美大島の遺産が眠るのは各集落なので、奄美大島を訪れた人がまず資料館に来てくれて、歴史や文化に興味を持って集落を訪れて遺産を感じて欲しい。」と話します。

奄美市歴史民俗資料館のスタッフ

(写真左:久伸博さん、写真右:川畑榮さん)

館内はスタッフの川畑さんに声をかけていただければ案内も可能です。奄美大島の歴史に大変詳しい川畑さんのお話を聞けば、歴史に興味がなかった人でもきっと興味が湧いてくるでしょう。

奄美大島のこれまでの暮らしが眠る奄美市歴史民俗資料館、あなたもぜひ歴史のロマンを感じてみませんか

 

※館内は写真撮影が禁止されています。館内での写真撮影やSNSでの投稿はご遠慮ください。

取材の場合は、事前にご連絡いただければ対応可能です。

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この記事を書いたフォトライター

田中 良洋

田中 良洋

映像エディター/予備校スタッフ 兵庫県出身。奄美群島の文化に魅かれ、2017年1 月に奄美大島に移住。島暮らしや島の文化を伝えるために自身のメディア、離島ぐらし(https://rito-life.com/)を運営する。

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