【奄美の七不思議その3】奄美大島瀬戸内町に漂着したワニの謎に迫る!
島コト
2018/05/29
田中 良洋
こんにちは。よーすけです。
去年、奄美大島で起こり全国的に話題になったこのニュースをご存知でしょうか。
奄美大島の加計呂麻島でワニ?!?!
Yahoo!ニュースにも取り上げられるほど話題になりました。
奄美大島で生息しないはずのワニがなぜ発見されたのか?
ワニはどこから来たのか??
実は島にワニが生息していたのか???
そして今、ワニはどこにいるのか????
もしかしてワニは食べられたのか?????
謎が謎を呼ぶワニ騒動。
真相が気になった人も多いのではないでしょうか。
ワニが見つかった瀬戸内町へ
真相を調査するため、ワニが見つかった奄美大島の瀬戸内町にやって来ました。
ワニが発見されたのは海の向こうの加計呂麻島の瀬相(せそう)集落と於斉(おさい)集落だそうですが、今回は発見された発見されたワニのお話を聞くために瀬戸内町立図書館・郷土館へ向かいます!
この郷土館の学芸員、町健次郎さんにお話を聞きました。
実は今回だけじゃなかった島とワニの関係についてお伺いしました!
「さっそくなんですが、瀬戸内町でワニが発見されたとという話は本当ですか?」
「本当ですよ。発見されたのはちょうど三連休で行政機関がお休みの日だったんだよね。一旦町内の保護施設に預けられたんだけど、行政機関がちょうど休みで連絡がつかなくてね。土日に開いていたこちらになぜか問い合わせが集中したんだ。」
「なるほど。行政機関が休みの日だったので、町さんが問い合わせ対応することになったんですね。」
「そうそう、ここは図書館と郷土館なので本来関係ないからね。(笑)」
「大きさはどのくらいだったんですか?」
「60cmくらいだったかな。」
「二匹見つかったんですよね?」
「一匹は加計呂麻島の瀬相集落の港で見つかったんだけど、もう一匹がミステリーだった。島の裏側の於斉集落の近くの道で見つかったんだよ。」
「海の近くで見つかったんじゃないんですか?!」
「だからミステリーなんだよ。海に漂着して道にそって歩いて来たのか…。保護施設に持って行かれたんだけど、すぐ亡くなってしまったんだ。」
「生きてるやつはどうなったんですか?食べたんですか?」
「いやいや、まさか食べないよ。今は静岡大学に引き取ってもらっている。交雑種じゃなくて純血種だったら動物園でも引き取りがあったかも知れないねぇ。」
「何かと何かの雑種だったってことですか?」
「シャムワニとイリエワニの交配種だそうです。それも後で分かったんだけどね。島には、島の自然や生き物に詳しい人はいるけど、さすがにワニに詳しい人はいないからね(笑)。管理も瀬戸内町や県か国か、どこが対応すべきかみんな最初は迷ったようだよ。」
知られざる瀬戸内町とワニの歴史
「実は瀬戸内町にワニが来たのは今回が初めてじゃなく、以前にも来たことがあったんだよ。」
「郷土館に剥製がありましたけど、あれですか?」
「そうそう、昭和49年に瀬戸内町の浜で見つかったらしい。当時の高校生4人くらいかな。浜で遊んでいたら岩場の上に生き物らしきものを見つけて。近寄るとサササッと海に逃げたけど、高校生たちはすぐさま追いかけてね。一人は履いてた靴の靴紐を使ってワニの口を縛って捕まえたらしいよ。」
「めっちゃたくましいですね!!(笑)」
「そうなんだよ。しかも、当時は今よりもゆとりがあったのか、『飼おう』となったらしく、瀬戸内町の清水という集落に当時あった国民宿舎の池に放って飼うことにしたらしい。4、5年飼っていたという話だよ。」
「飼ってたんですか!!!しかも、4、5年って結構生きましたね。」
「冬場に寒いだろうと、ある人がワニのためにヒーターを用意してあげたんだよね。そしたら、ワニがヒーターに噛み付いちゃって感電して亡くなったそうだよ。」
「えぇ?!優しさが逆効果になっちゃったんですね!亡くなったあとはどうしたんですか?食べたんですか?」
「いや、食べてないよ。剥製がここにあるでしょ!『はげ〜、もったいない!この死体どうしようか…』と言っていたら理科の先生が剥製にしてくれたんだ。」
「このワニはどういう種類のワニなんですか?」
「正確には分からないけど、おそらくイリエワニという種類のワニ。東南アジアに棲む種類で、大きいものだと4メートルくらいになるらしい。人を襲う可能性もあるワニだよ。」
「そんなワニが二度も奄美大島に流れ着くなんて…」
「昭和49年に見つかったワニは10月に見つかったらしく、去年見つかったのも同じくらいだった。この時期は黒潮に乗って漂着しやすいのか、という意見もあったけど、それだと瀬相集落で見つかったワニは説明がつかないんだよね。海峡のど真ん中で見つかったものだから。ワニがどこからやってきたのか、まだまだ謎のままだよ。しかも、ずっと昔にも奄美大島でワニが見つかった記録があるんだ。」
「昔にも見つかっているんですか?!」
「江戸時代に書かれた南島雑話という書物にワニが流れ着いた記載があるんだ。奄美大島の住用町の内海で見つかったと。しかも、そこでは年寄りから順番に食べたらしい。ウミガメと似た味がしたって書いてあるよ。」
「えぇ?!食べたんですか??しかも、ウミガメと同じ味って本当ですか?」
「今じゃウミガメを食べることはないから分からないけど、当時は食べたんだろうね。」
↓こちらが南島雑話のワニの記載があるページ(奄美博物館所蔵)
「ウミガメと同じ味がするのか気になるなぁ。興味あるので住用町にも行ってみますね!ありがっさまりょうーた!!」
住用の内海でワニの手がかりが?!
更なるワニの手がかりを見つけるために住用町の内海にやっていました。
海を見渡しましたが、さすがにワニがいる様子はありません…
「仕方ない、集落を散策してみるか。」
「あっ!すみません、ワニについてお聞きしたいんですが…」
「ワニ??」
「南島雑話という本の中に『住用の内海にワニが出た』という記述があったそうなんですが、そのことについて知ってる人いないかな、と思いまして…」
「南島雑話の話は分からないけど、ワニならうちにいるよ。」
「え?!?! いるんですか?」
「あがりなよ。」
お邪魔したのは農家体験民泊「ルパン爺とすずめの宿」。
本当にここにワニがいるのか?!
「これだよ。」
「剥製じゃないですか!」
「いや、飼うのは無理でしょ。」
「でも、何でここにワニの剥製があるんですか?」
「うちの親父がいろんな物を集めるのが好きでね。気がついたらうちにあった。」
「そうなんですね。あれ?ここ縫ってありますけど…」
「これ、中身食べたんですか?」
「まさか!!剥製の状態でうちに来たから食べてないよ。」
「南島雑話には、『ワニはウミガメの味がした』って書いてあったんですけど、本当にウミガメの味か分からないですか?」
「ワニもウミガメも食べたことないから分からないけど、そういえば名瀬にワニの肉が食べられる場所があるそうだよ。」
「奄美大島にワニが食べられるところがあるんですか?!」
「確か、Passe-temps(パスタン)という店だったはず…」
「それは食べてみたい!ありがとうございます、行ってみます!!!」
ワニの味は本当にウミガメの味?!
奄美大島の飲屋街、屋仁川通りにあるPasse-temps(パスタン)にやってきました。
果たして、本当にワニは食べられるのでしょうか?!
メニューを見ると確かに!!!
『クロコダイル』の文字があります。
「すみませ〜ん、クロコダイルひとつお願いします!」
「は〜い、クロコダイルお持ちしました!」
とってもボリューミーなワニの肉!!!
見た目は鶏肉のようで、アヒージョとバゲットがついています。
そして何と言ってもこのワニの手!!!
ウロコまではっきりしていてリアルです。
「すごいですね、このワニ。これ、なんで始めようと思ったんですか?」
「オーナーが『何か面白いことしたい』と言い出したのがきっかけです。昔、オーストラリアでワニを食べたことがあったらしく、それがきっかけでお店でも出すようになりましたね。」
「先日、瀬戸内町でワニが見つかったじゃないですか。ここのワニなんじゃないか、と言われなかったですか?」
「言われましたよ。『パスタンが飼ってたのが逃げ出したんじゃないか。』ってね(笑)。でもうちは、専門の業者からワニ肉を仕入れてるのであのワニとは関係ないですし、飼ってもいませんよ。」
「やっぱりそうですよね!(笑)ところで、南島雑話という本に『ワニはウミガメの味に似ている』と書いてあったんですが、本当ですか?」
「ウミガメ食べたことないので分からないですね(笑)。どちらかというと、鶏肉に似た味がしますよ。食べてみてください。」
「いただきます!でも…これどこから食べたらいいんですか?」
「手の部分がオススメです。手羽先のようにカブリついちゃってください!」
「そんなワイルドでいいんですね!では、いただきまーす!!」
ガブッ
ンッ
ンーーーーーーッ
ウマいっ!
味は鶏肉に似ていて、サッパリしています。友人グループで一緒に来て、みんなで食べるとインパクトもあり、楽しいのではないでしょうか。ガーリックオイルをつけて食べるのがオススメです!!
ちなみに残りのワニはスタッフが美味しくいただきました。
本当に美味しく、骨しか残りませんでした。
奄美大島と何かと所縁のあるワニ。探して見るとまだまだ関係が出て来そうです。
謎が謎を呼ぶワニ問題。ワニをテーマに奄美大島に訪れてみるのも面白いかもしれませんよ!
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この記事を書いたフォトライター
田中 良洋
映像エディター/予備校スタッフ 兵庫県出身。奄美群島の文化に魅かれ、2017年1 月に奄美大島に移住。島暮らしや島の文化を伝えるために自身のメディア、離島ぐらし(https://rito-life.com/)を運営する。