【奄美の七不思議その7】奄美の市街地名瀬とジョン・F・ケネディの知られざる関係
島コト
2018/07/04
田中 良洋
「はぁ、あっちぃ〜。」
こんにちは。ゆうです。
アイスを食べながら失礼します。
最近、奄美大島の気温が上がってきて昼間は半袖でもいい日が増えてきました。
こんな日にはやっぱりアイスですよね。
おいしいなぁ…
「あれ…?」
「なんだあれ?」
「十字架だ!!!」
「なんであんな山の中腹に十字架があるんだろう?
そういえば、奄美大島って教会が多いよな…。」
島を車で走っていると大きく立派な教会や、色鮮やかな可愛らしい教会が見つかります。
実はキリスト教信者も多い奄美大島。
七不思議シリーズの最後は、奄美大島とキリスト教の関係について探ります!
アメリカ統治時代の奄美大島と教会
というわけで、奄美市名瀬の西仲勝集落にある教会を訪れました。
今回は、西仲勝修道院の院長である深堀るみ子さんにお話を伺いました。
「早速なんですが、奄美大島にキリスト教が渡って来たのはいつ頃なんですか?」
「いつ頃か正確なことはわからないですが、100年以上前だと思います。私たち修道院は1952年(昭和27年)に来ました。その頃はまだ奄美大島はアメリカの統治下の時代で、外国なのでパスポートが必要でした。」
「パスポートが必要だったんですか!?大変な時代に来られたんですね。」
「気候も違うし、はじめは『本当に大丈夫か?』と心配でした。先に責任者の人が来て様子を見たんですが、当時奄美大島にいた神父様の熱い要望と信者の方々がとても熱心にお祈りされているのを見て、来ることを決意したと聞いています。」
「ちょうどその頃、後に名瀬の名誉市民ともなったジェローム神父様も奄美にいらっしゃいました。この方は奄美の社会福祉の父とも言われており、乳幼児施設や知的障害児施設を建設し、困っている方達の生活が少しでも良くなるようになさっている方でした。ジェローム神父様がきっかけで多くの神父様やシスターが奄美にいらっしゃったのです。」
「すごいですね。ジェローム神父様のおかげで今の奄美の人々の生活があるようなものですね。」
「そうですね、マリア教会にはジェローム神父様の銅像も建てられていますよ。」
教会はシマの人の拠り所
「奄美大島って不思議な場所ですよね。教会もあればお寺もあるし、土俵もある。独特な文化の場所だなぁ、と思うんです。」
「私も最初に来た時は驚きました。」
「何か、奄美大島だからこそと言うか、地元の人にとっての教会やキリスト教の関わりが他の場所と違うな、と感じたことはありますか?」
「他の地域に比べて地域に根ざしていると言うか、地域の人と共に生きているなと感じました。」
「具体的にはどういうことですか?」
「昔、私たちの先輩にあたる人たちが奄美大島に来た時は本当に何もなかったと聞いています。病院もないので診療所を始めていたんです。看護師のシスターが先生の指示で注射をしたり、血圧を測ったりしていました。診療所の他にも、乳児院があったり、今も老人ホームがあったりします。信者かそうでないかは関係なく、地域の人にとって何かあれば飛び込んで来る場所だったんですね。」
「今でも朝と昼と夕方に鐘を鳴らすようにしているんですが、それを目覚まし代わりにしている人もいるんです。たまに別の予定があって鳴らせないと『シスター、今日は鐘が鳴らなかったじゃない!』と言われるんですよ(笑)。信者じゃない人ですよ。でも、それこそ教会の本来の姿だと思うんです。」
「なるほど、確かに地域の人と共に生きている感じがしますね。」
「一緒になって教会でお祈りするのはもちろんですが、それ以外の地域の活動を一緒に考えて活気付けられたらいいなと思っています。これからも地域と共に歩んで行く場所でありたいですね。お年を召された方はなかなか教会に来れなくなることもありますが、そんなときは、今でもやってるんですが、こちらから足を運んで『今日はこんなことがあったよ。』とお話できる関係でありたいですね。」
「僕、教会という場所を勘違いしていた気がします。本来教会って、地域の人の拠り所である場所なんですね。」
「観光で訪れた人が教会に来るのは問題ないのですか?」
「それは全然問題ないですよ。見ていただいて構いません。場所によっては神父様が巡回していて、日によっては開いてない教会もありますが。」
「せっかくなので奄美大島の教会も見てもらいたいですよね!」
「観光の方にオススメなのは名瀬市街地にある聖心(みこころ)教会ですね。あそこにはアメリカのケネディ大統領の葬儀が行われた祭壇があるんですよ。」
「え??ケネディ大統領って、ジョン・F・ケネディ大統領の祭壇ですか?それが奄美大島の教会にあるんですか?」
「そうなんです。詳しいことは聖心教会で聞いてみてください。」
「えぇ!!それはぜひ聞いてみます!ありがとうございます!!!」
ケネディ大統領の祭壇を見に聖心教会へ
本当にこんな日本の南の島の教会にケネディ大統領の祭壇があるんでしょうか…
「うわぁ、すごく立派な教会だな…」
「どうかしましたか?」
「あ!すみません、この教会にケネディ大統領の葬儀で使われた祭壇があるって聞いたんですけど…」
「祭壇ですか。あれのことですよ。」
「これがそうなんですか!すごい…
なんでこんな祭壇が奄美大島にあるんですか?」
「この祭壇は、1964年2月2日に軍艦ココダ号で運ばれてこの教会にやってきました。」
「もともとはアメリカのワシントン大司教区、司教座聖堂聖マテオ教会にあって取り壊される予定の祭壇だったそうです。しかし1962年に聖心教会のルカ神父様が休暇でアメリカへ帰国していたときにその祭壇に出会い、壊すなら奄美大島へ寄贈してほしいと約束したそうです。
その翌年1963年にケネディ大統領の祭壇として使用され、1964年に約束通り奄美大島へ祭壇が運ばれてきたのです。」
「すごく不思議なご縁ですね。まさか奄美大島に祭壇があるなんて…」
「当時は大変だったと思いますよ。こんな大きな祭壇を船で運ぶのは。」
「この教会はいつからあるのですか?」
「1922年に聖心教会は完成しました。火事で焼失したこともありましたが、建て直しながら今も続いています。」
「すごく綺麗で立派ですよね。」
「最近、建て直しをしたのです。この建物は鹿児島で5つしか選ばれていない、都市デザインの大賞に選ばれました。」
「この建物を見に観光客の方も来られるんじゃないですか?」
「来られますね。外国の方もたくさん来られます。ぜひ多くの人に見てもらいたいですね。」
「ケネディ大統領の祭壇があるなんて、なかなかみんな知らないですよね。でも、そういうことをきっかけに奄美と教会の歴史なども知ってもらえるといいですよね。」
「そうですね、せっかく素晴らしい祭壇や建物があるので、たくさんの人に気軽に来てもらいたいですね。」
教会の調査を終えて…
「おもしろかったぁ。まさか奄美大島の名瀬にケネディ大統領のお葬式で使われた祭壇があったなんて。奄美大島は教会巡りをしてみても楽しいかもな。」
「それにしても疲れたなぁ〜。話聞いてたらすっかり遅くなってしまった。今何時だ?」
「うわぁ、もう十時か(じゅうじか)。」
※本記事のオチに関する苦情は一切受け付けておりませんのでご了承ください。
この記事を書いたフォトライター
田中 良洋
映像エディター/予備校スタッフ 兵庫県出身。奄美群島の文化に魅かれ、2017年1 月に奄美大島に移住。島暮らしや島の文化を伝えるために自身のメディア、離島ぐらし(https://rito-life.com/)を運営する。