奄美の自然の中からうまれる鮮やかなきらめき。sea shore stained glass 熊崎 浩
島モノ
2017/03/06
トヨヤマ コトネ
以前あるお店でステキなステンドグラスのシャンデリアが吊るされているのを見かけた。
「ステキなシャンデリアですね」というと、お店の店主は「sea shore stained glassさんに作ってもらいました」と答えた。
私がsea shore stained glassの作品を見たのはそれが初めて。どんな人が作っているのか気になっていて、今回ご縁があり取材をさせてもらうこととなった。
「sea shore stained glass」は龍郷町の芦徳集落にある。奄美クレーターでできた穏やかな内海を眺めながら車を山の方に走らせると、一軒の建物にたどり着く。
お店というよりはアトリエ&ギャラリー。周りは一面緑に囲まれていて、木で作られたアトリエは自然のなかにしっくりと馴染んでいた。
オーナーの熊崎さんは、静岡県出身。以前はオーストラリアに住み、西洋のものを生業にしようとふと考える。そのほんの少しのきっかけでステンドグラスの世界に飛び込んだそうだ。
だがオーストラリアは日本のように修行しながら働くというスタイルがないため、報酬は価値に見合った出来高制だったという。
はじめはなかなか売れず苦戦したが、いろんなお店で置いてもらううちに、ある工房の目に止まった。作品が気に入られ、そこで働かせてもらうことになったのだと話す。
「奄美に来たのは今から13年前。やっぱり、制作をする上で強い自然は必要で。この場所を選んだのも、一面緑に囲まれている中で生活したいなと。自然を見てると面白いんですよ。観葉植物とか外来種がだんだん枯れていって、どんどん前からあった古代種の植物ってのが押し寄せてくるんですよ。椎木であったりとかね。それがゾクゾクしちゃうよね。このライブ感がすごくいい。」(※撮影時2016年10月)
熊崎さんの作る作品は、花や波をイメージしたものであったり自然からインスピレーションを受けて作品にしているものが多い。
色づかいはとても優しい。見ている人を落ち着かせるような柔らかい、メローな雰囲気を持っている。
「特に奄美の自然っていうのを意識してやってきました。波も複雑なものもあれば、4ピースで書いちゃうときもあるし、自分が壊しちゃった波もある。
奄美の自然に限定しなくても、結局デザイニングっていうのは自然からきてると思うんですよ。伝統的なデザインとかも。ただの曲線にみえて実はそこにちゃんと意味があったりとか。なんでこの丸になったんだろう、なんでこの丸が連なっているんだろうとか色々考えますよね。日本の昔からある唐草模様とか水引のデザインとか。やっぱり自然の中から生まれているんですよね。それを幾何学模様にしたり抽象的にしたりして、削りとってシンプルな状態にしていたり。そういうものを作品の中に取り入れたりもしています。」
熊崎さんのアトリエ。ここから素敵な作品が生まれる。
綺麗に整頓されている空間の窓側には天使とミツバチとかたつむりがいた。とても可愛らしい。
「あくまでアートワークって贅沢品であって、別に窓ガラス一枚いれるだけで雨風はしのげるわけじゃないですか。でも歴史が語っているようにアートって絶対欠かせなくて、それが人間の心を気持ちよくさせてくれたりとか、何げない生活にエッセンスを与えてくれたりするので絶対に必要なんじゃないかなぁって勝手に信じて続けています。」
日常にそっと寄り添うように作られた熊崎さんの作品は、大きなパネルから小さなオーナメントまですべて受注製作を行っている。
ただのガラスではなくそこにはちゃんと意味があって奄美の沢山の自然から生み出されている。
光を受けてこそ生きるステンドグラスは、今日も誰かの生活の中に鮮やかでやわらかなきらめきをもたらしている。
この記事を書いたフォトライター
トヨヤマ コトネ
フォトグラファー/しーま編集部。 奄美2世。大阪のフォトスタジオで勤務後、 幼少期から何度も訪れていた思いいれのあるシマに2014年移住。写真や言葉にするのが難しい奄美の美しさをどう表現するか日々模索中。