「湯湾岳」標高694m。奄美で一番高い場所
島景
2016/06/07
別府亮
島と聞くとビーチや海の印象が強いかもしれませんが、奄美大島は実に山が多い島です。奄美大島北部はまだ平坦なのですが、南へ行くにつれてどんどん山が深くなっていきます。
幹線道路の国道58号線を南下して行くと、山とトンネルばかりと言っても過言じゃありません。

奄美大島はザックリ言うと三角形の形をしています。
海岸線以外は山なので、南へ行くほど山の面積は広くなります。
山深い奄美大島中南部。山々が連なる中、最も高いのが湯湾岳。奄美最高峰です。

湯湾岳は標高694.4m。宇検村と大和村の間にあります。
山頂への登山道も、宇検村側と大和村側からの2ルートがあります。
宇検村側の登山道入口である「湯湾岳公園」からは、徒歩で1時間ほど。登山道沿いの植物を観賞しながらじっくりと登っていけます。
大和村側の登山道入口は、車で9合目まで登ったところにあります。宇検側からの登山道にボードウォークを通じて合流し、山頂まで徒歩15分です。

湯湾岳は古くから霊峰としても崇められ、奄美を開祖した二神が降り立った場所と言われています。頂上に至る手前に広場があり、そこにはお堂や祠(ほこら)があります。
以前はこの場所にヤグラがあり、登ると木々の上から山頂付近の景色を楽しめましたが、現在は老朽化のため解体されています。

山に登る=見晴らしが良いという構図は湯湾岳には当てはまりません。
湯湾岳は山頂にたどりついても木々が生い茂っています。
パッと見、進んでも進んでも代わり映えの無い登山道です。
でも実は、登山道沿いのあちこちに滅多に見られない植物が何気なく存在しています。時折聞こえてくる野鳥の声も、何の鳥か知っているだけで心浮き立つものです。
島の動植物への関心の深さによって、見えてくるものが違う場所でもあります。季節を変えて何度も登りながら動植物について色々調べたり、あるいはネイチャーガイドと一緒に登るだけでも旅の味わいはより深まることでしょう。

そうそう、2016年1月24日に奄美大島は115年ぶりの降雪を記録しました。
観測所がある平地で降らないと公式記録にはならない雪ですが、湯湾岳など高い山では数年に一度くらいの割合で雪が降ったりしています。
記録には残らない雪ですが、もし出会えたらきっと記憶には残ることでしょう。奄美で一番高い所は、奄美で一番寒い所でもあります。南の島に降る雪を目指すのも面白いかもしれません。
この記事を書いたフォトライター

別府亮
写真家。1974年生まれ。生活圏のすぐそばでダイナミックな表情を見せる奄美の風景が、主な被写体。とはいえ頼まれれば何でも撮ります。シャッターを切っている時が一番幸せ。毎日の撮影記録はHP「奄美大島探検マップ」(https://www.amamicco.net/)にて公開。奄美生まれ奄美育ち奄美大島在住。